内容説明
小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早のもとに現れた高校1年の生徒・野津秋成は、ごく普通の悩みを打ち明けるように、こう語りだす。「ぼくは人を殺してみたい。できるなら、殺すべき人間を殺したい」千早の住む町に、連続一家監禁事件を起こした入壱要が暮らしていることがわかる。入壱は、複数の女子高生を強姦のうえ執拗に暴行。それでも死に至らなかったことで、懲役15年の刑となり刑期を終えていた。「悪はある。悪としか呼びようのないものが」殺人衝動を抱える少年、犯罪加害者、職場の仲間、地域住民、家族……そして、夫婦。はたして人間は、どこまで「他人」を受け入れられるのか。社会が抱える悪を問う、祈りに溢れた渾身の書き下ろし長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
155
著者二作目は大藪春彦賞受賞作。凄惨な罪を犯した犯罪者が刑期を終え、もし自分が住む地域に暮らし始めたとしたら、それを受け入れることができるでしょうか。また同じ罪を重ねるかもしれないからと、やはり排除するでしょうか。法に基づく罪は償っても、今のその人の内面は分からないから怖いのです。一度罪を犯してしまったら、二度と社会に受け入れられることはないのか。今まで考えることを避けてきたことかもしれないけど、難しい問題だと思いました。2021/10/17
H!deking
88
やっぱり呉さんは面白いですね〜!スクールカウンセラーの主人公と殺人の衝動を相談にきた中学生。過去に猟奇的事件をおこしたが刑期満了して出所してきたサイコパス。人間は他人をどこまで受け入れられるのか?!あなたの近所にサイコパスが住んでたらどうするの?!ざっくり言うとこういう感じのお話です。これまたどこにも感情移入出来ないお話でした。呉さんすっかりくせになってます笑2023/06/24
ゆいまある
84
エンタメ作品。スクールカウンセラーが主人公。「人を殺したい」という高校生が現れ、殺したい程酷い事件を起こした犯罪者が現れる。心理職と精神科医の境目がぐちゃぐちゃだし、私的なカウンセリングと公的な精神鑑定の区別もつけていないし、性犯罪は自主規制で細かく報道されないものだし、実名報道された犯罪者は名前変えるから簡単に居場所特定されないし、突っ込みどころしかないが、それはそれ。犯罪者と共存しながら生きていくべき。彼らと我々は変わらないという着眼点は面白いしリーダビリティも高い。ミステリパートがまどろっこしい。 2023/08/15
yutaka
61
呉勝弘6冊目。色んなことを考える切っ掛けになる作品ではあるが、感想を文章にするのが難しい。悪を包摂する社会は必要と思う一方で、自分の身近な人を害した加害者を受け入れることができるかと言われれば、そこまでの聖人君子にはなれそうもない…。う~ん、難しい…。2024/06/19
竹本明
41
難しかった。大藪春彦賞の文字に惹かれ、読み始めたが・・・難しかった。サイコサスペンス?ミステリー?と思うところもあり、何とか読み切ることはできたが・・・重い内容・・・結末も、いまいちの感じであった。2019/09/30