遊びが学びに欠かせないわけ - 自立した学び手を育てる

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遊びが学びに欠かせないわけ - 自立した学び手を育てる

  • ISBN:9784806715559

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内容説明

異年齢の子どもたちの集団での遊びが、飛躍的に学習能力を高めるのはなぜか。
狩猟採集の時代の、サバイバルのための生活技術の学習から解き明かし、
著者自らのこどもの、教室外での学びから、学びの場としての学校のあり方までを
高名な心理学者が明快に解き明かした。

生涯にわたって、良き学び手であるための知恵が詰まった本。

【本書への賛辞】
ピーター・グレイは、「子どもの遊びの進化学」に関する世界的な権威の一人です。そして、心理学の百科事典的知識と慈悲深い口調を、差し迫った課題である学校改革に応用しています。彼が本書で提案しているすべてには賛同しなくても、彼は私たちに、子どもたちの自然な学び方に順応した学校がどうあるべきかを、再考するように迫っています。
――スティーブン・ピンカー(ハーバード大学心理学教授)

すべての子どもは、学ぶことが好きです。でも、ほとんどの子どもは、学校(勉強)が嫌いです。この矛盾について私たちは話すのを避けていました。好奇心の塊であるあなたの子どもが不機嫌な怠け者になってしまうのはなぜなのか不思議に思ったことのある読者に、本書は答えと対処法を提供しています。
――『自由に羽ばたける子どもを育てよう』の著者、レノア・スクナージ

ホーム・スクーリングをしている親や、子どもの幸福を願っている者にとってかけがえのない本。
――ホーム・エデュケーション(在宅教育)マガジン誌

著者ピーター・グレイは、科学と進化生物学を通して、人類は遊ぶようにデザインされていること、遊びを通して成長すること、そして子どもにとって遊びは学ぶことと同義であることを証明しています。本書は、私たちに前提(パラダイム)の劇的な変化を迫り、適応し続ける人類の長期的な生存にとって欠かせない書になっています。
――スチュアート・ブラウン(全米遊び研究所理事長/カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授)

目次

プロローグ─息子が校長室で発した言葉から教育の生物学的意味を考え始める

第1章  子ども時代の過ごし方の大きな変化
人生に必要な知恵はすべてルービー・ルーから学んだ
50年かかって教育環境から失われたものとは
外遊びをしないで育つ子どもたちの心理的障害
子どもたちの自由な遊びの減少と心理的障害の増加

第2章  狩猟採集民の子どもたちは遊びでいっぱいだった
狩猟採集民の断固たる平等主義
寛大さと信頼にあふれた子育てはどこから来るのか
狩猟採集民の子どもは集約的にスキルと知識を身につける必要がある
社会的なスキルと価値観を学ぶのは、子どもたちだけで無制限に遊ぶ時間
並外れた自制心は、どのように育まれるのか

第3章  学校教育の歴史
誰の必要から、いまのような学校はできたのか?
農業が変えた子育ての目標
子育てに覆いかぶさる封建主義と産業のさらなる影響
学校の誕生──初期の神学校の洗脳と服従訓練
カトリック教会と学びのトップダウン[垂直]型の支配
プロテスタント主義の台頭と義務教育の起源
義務教育制度──どのようにして学校は国家に奉仕するようになったのか
高まり続ける学校のパワーと画一化

第4章  強制された教育制度の7つの罪
子どもは無能で、信頼に値せず、強制されることが必要な存在
学校と監獄
罪1 正当な理由も適正な手続きもなく、自由を否定している
罪2 責任能力と自主性を発達させる妨げになっている
罪3 学びの内発的動機づけを軽視している(「学び」を「勉強」ないし「苦役」に転換している)
罪4 恥ずかしさ、思いあがり、皮肉、不正行為を助長する形で生徒を評価する
罪5 協力といじめの衝突
罪6 クリティカル・シンキングの禁止
罪7 スキルと知識の多様性の減少

第5章  母なる大地は現代においても有効である
管理された学びと遊びから自由をとりもどした学校
本当に民主的な学校
教育機関としての学校
卒業生の成功はどうして説明できるのか?
サドベリー・バレーは、どのように狩猟採集民と似ているか
● 遊びと探究するための時間と空間
● 生徒たちは年齢に関係なく自由に交流できる
● 知識があって、思いやりのある大人たちとの接触
● 様々な設備・備品へのアクセスと、それらを自由に使えること
● 考えを自由に交換できること
● いじめからの解放
● 民主的なコミュニティーに浸っている
生徒たちの学校での活動と卒業後のキャリアとの継続性

第6章  好奇心、遊び心、社会性
インドで見る子どもたちの自己教育力
学習能力がある動物
好奇心─探究し、理解しようとする欲求
遊び心─練習することとつくり出すことの欲求
6つの遊びのタイプ
●肉体的な遊び
●言葉遊び
●探索的な遊び
●建設的な遊び
●空想的な遊び
●社会的な遊び
人間の社会性・情報や考えを共有したいという欲求
学校はどうやって子どもたちの教育への本能を阻止しているのか

第7章  遊びのパワー
心理学が解き明かす学び、問題解決、創造性
遊びのパワー・4つの結論
●いい結果を出すような圧力は、新しい学びを妨げる
●創造的になるように求める圧力は、創造性を妨げる
●遊び心を誘導すると、創造性や洞察のある問題解決力が高まる
●遊び心の心理状態が、年少者が論理的な問題を解くのを可能にする
遊びについて深く考える
●遊びは自己選択的で、自主的
●遊びは結果よりも過程が大事
●遊びの規則は、参加者のアイディアに導かれる
●遊びは想像的
●遊びは、能動的で、注意を怠らず、しかもストレスのない状態で行われる
遊びのパワーは些細なことにある
まとめ

第8章  社会的・感情的な発達に果たす遊びの役割
遊びとしてするスポーツからの教訓
教訓1 試合を続けたければ、全員を満足させ続けなければならない
教訓2 ルールは修正可能で、プレーヤーたちによってつくられる
教訓3 対立は、話し合い、交渉、妥協で解決する
教訓4 あなたのチームと相手チームの違いは一切ない
教訓5 よいプレーをして、楽しむことの方が、勝つことよりもはるかに重要
ごっこ遊びからの教訓
ホロコーストにおける子どもの遊び
「危ない」遊びの価値
共感能力の低下と自己中心主義の増大
ビデオゲームはどうでしょうか?

第9章  なぜ異年齢の混合が子どもの自己教育力を飛躍的に伸ばすのか
異年齢混合──教育機関の秘密兵器
年少の子どもたちにとっての異年齢混合の価値
●「今日誰かの助けがあってできたことは、明日一人でできるようになる」を遊びで練習し続ける
●年長者のすることを観察することで学ぶ
●ケア(気づかい)と精神的なサポートを受ける
年長の子どもたちにとっての自由な異年齢混合の価値
●育てたり、リードしたりすることを学ぶ
●教えることを通して学ぶ
●年少の子たちの創造性が喚起する影響

第10章  「最悪の母親」と信頼にあふれた子育て
3つのタイプの子育て
●信頼にあふれた子育て
●指示的で支配的な子育て
●指示的・保護的な子育て
信頼にあふれた親が減少する理由
●近所の弱体化と、子どもたちの近所での遊び友だちの喪失
●子育てについての常識の低下と世界的な不安の上昇
●未来の雇用の不確実性の増大
●学校の力と、学校が押しつける抑圧的な諸条件に従わせる必要性の高まり
●学校中心の子どもの成長と子育てモデルの増大
より信頼にあふれた親にどうしたらなれるのか
●自分の価値を検討する
●あなたが子どもの未来を左右するという考えを捨てる
●子どもの活動をモニター(監視)したいという誘惑に耐える
●子どもが遊べて探索できる安全な場所や機会を見つけるか、つくり出す
●従来の学校に代わる別の可能性を考える
将来的なビジョン

訳者解説─自立した学び手をどう育てるか
索引
訳注で紹介した参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ta_chanko

22
狩猟採集民の子どもたちは、異年齢集団の中で遊びながら、生存に必要なことを学んでいく。大人は何を教えるでもなく、子どもたちのしたいようにさせておく。これが人間本来の本質的で本能的な学び。学校では同年齢の子どもたちが集められ、子どもは何もできず何も知らない前提で上から教えられ、創造や学びに不可欠な遊びは否定される。工業社会には合ったかもしれないが、より良い未来を創っていくためには、本能的な学びが不可欠。急激に教育システムを変えることは難しいが、できるところから少しずつ。まずはマインドから。2022/10/11

りょうみや

22
良い内容だった。結論としての教育論や学校制度の考え方は一言で言えば「子供の自主性を重んじる」ものでそれ自体は目新しいものではないが、著者の考えの全ての出発点は人の営みや幸福は狩猟採取民の頃から本質的には変わっていないというところであり、そこから本書の主題である遊びが(人間以外も含む)生物にとっていかに本質的であるものかを論じ、理想の教育論、幸福論を導いているところが新しく、そしてとてもおもしろい。2018/07/08

nico

19
子どもは自主的な遊びや異年齢交流によって自己教育力を伸ばすことを、様々な実験や文献を通して主張してる。どちらかというと、公教育批判のほうが内容多い?異年齢で、自主的な遊びを通して学ぶのが理想だし、その方が飛躍的に伸びるというのは分かる。でも現実として学校をどう変えるべきかは考えられてなくて、ただ批判し、現場任せの論調でガッカリしてしまった。文字に興味持たなくてもいい?政治が分からなくてもいい?何度も比較対象として出てくる狩猟採集民と同じように、2021/07/12

Naomi

17
図書館本。狩猟民族の子どもたちは、大人の目から離れた場所で、異年齢で過ごす時間があった。危ないこともその都度覚えてゆく。遊びと学びと生活が、一緒だったんだなぁって感じた。クラブ活動のスポーツと、集まったメンバーで行う草野球や集団遊びは、全く違うものだった。興味深い内容でした(^-^)2021/09/15

かいじゅう

11
刺激的な一冊でした。 親として、教師として考えさせられました。       大人の不安や、子どもをコントロールしたい欲求が肥大化して、子どもたちの豊かな子ども時代が失われてしまってきている。 今の教育の在り方が、子どもの自然な学びにとって、いかに不自然であるか、突き付けられた感じがしました。       クラスの中からだけでなく、より俯瞰的な立場から考えた子ども目線をもつことが大切だと思いました。 「信頼にあふれた」、自由で子どもの自然な学びに近い、子育てや教育について考え、実践していきたいです。2018/07/13

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