内容説明
〈東琴(トゴン)〉の姫・アトリは王宮で虐げられ、まともな教育も受けられず内気に育つ。厄介払いとして幼くして送られた嫁ぎ先は、枯れ果てた小国〈柚記(ユシロ)〉に暮らす、病を得た王のもと。その地でアトリは王の教えを受け、知識と常識、そして愛情を手に入れる。やがて王は亡くなり、祖国へ帰ることになるのだが……。
これは生涯で5回も結婚することになった姫君の物語。数えで9歳の初結婚から、8年で5回というのはあまりに多い。
いったいどんな偶然で、5回も嫁ぐことになったのか。
それは、読んでのお楽しみ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ままこ
89
ネグレストされてた幼い王女アトリは数奇な運命により五人の王に嫁ぐことになる。最初に嫁いた慈悲深き「月の王」が考えることを放棄していたアトリに生きる力をもたらす。その後聡明な「少年王」のもとへ嫁ぐが…。過酷な運命に翻弄されながらも優しく強かに賢く成長していく。「強い者の弱い者への無関心は、暴力です」には納得。政治的陰謀や愛憎劇もあり切なく波乱万丈な物語。エンジ、ロルモ、カティンの存在は心強かった。2019/09/23
さつき
69
読友さんのレビューから。王女として生まれたのに継母に虐げられ実父にも見放されて育ったアトリ。9歳の初婚から5回の結婚を繰り返す波乱の生涯を送ります。こう書くと女の一代記のようだけど、これは児童書。描かれるのはアトリの9歳から19歳まで。10年間で起きたにしては戦乱も政争もめまぐるしく、それに巻き込まれ続けるアトリの人生も慌ただしい。虐待されて育った子が、しっかりした自我と定見を持つに至る過程が、悲しくも応援したくなる物語でした。「強い者の弱い者への無関心は、暴力です」このセリフ一つに全てが詰まっています。2019/10/09
あおでん@やさどく管理人
41
柚記で知識と常識、愛情を得たアトリの描写を読んでいて思ったのは、「自分のことを客観視する」ことの大切さ。知識を身につけて、様々な人の暮らしを知り、自分の立場と比較して考える。特に人の上に立つ者には求められることだと思うし、そうでなくても、客観視を意識することは「優しさ」とか「思いやり」につながっていくはず。2019/11/24
杏子
20
辺境の国〈東琴〉に生まれた王女アトリが5人の王に嫁ぐことになった物語。たった9歳で嫁いだ〈柚記〉の月王がすべての始まりだった。それまで実家では継母に疎まれ、実の父親からは無関心で放置され、何もできない考えもない子どもが、月王のもとで初めて人間になった。それからアトリはたった5年で次から次へと新たな王と結婚するが、それらの日々も、月王と従者のエンジらのお陰でアトリは自分で物を考え、動くことでやがて多くの人々の希望となる。「嫁ぐ」とはどういうことか?とアトリが自問する場面が心に残る。大人の女性にオススメです。2019/08/07
ゆうら
19
アトリは、月王と柚記の人々に出会わなければ、人として生きることを知らずにいた。女の子が幸せになるために必要な「知識」「常識」「愛情」を与えられ、それはその後の苦難の人生を支えることになった。自分の頭で考え、人と向き合うことは大事だなと思う。2019/09/15