内容説明
智治は学校の図書室で、(ちどり文庫)という学校所蔵とは違う蔵書印が押された本を見つける。学年が変わってもその本は置かれたままだった。シングルマザーの母と、海岸そばの団地に中古物件を購入し新しい生活を始めて智治は団地内で偶然、同級生の朝海と出会う。彼女はあの(ちどり文庫)本を手にしていた。インターネットで調べたらこの団地の中に「ちどり文庫」は存在するというが、管理人は不明だった。その頃智治は夜になると上の階から聞こえてくる奇妙な物音に悩まされていた。怖くなって母親に相談するが、やりくりしてやっと購入した部屋でもありあまり気にしないよう言われる。一方、自治会長の雑務を手伝うことでようやく「ちどり文庫」の管理人を教えてもらい、雨の午後朝海と二人で、団地の中の「文庫」を訪ねるが……。(「小鳥の蔵書印」)他に「猫町ガールの夢」「はなれの管理人」の三章立て。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
61
元司書だという著者の経歴と、本のモチーフに惹かれて手に取る。「ちどり文庫」を中心に集うひとびととその痛みを丁寧に描いていて好感が持てた。文庫とは、小型の図書のほかに私設図書館という意味も持っている。本も文庫もコミュニケーションのひとつの手段であるべきだと最近思うようになったのだが、それに対してのひとつの答えがいただけたようで嬉しかった。2019/07/25
ぶんこ
50
還暦過ぎた今まで、「文庫」が近くには無い生活だったので、ほのかな憧れがあります。自宅を開放して子ども達と本に親しむ・・・う〜ん、理想の老後。三咲さんが羨ましい。母子家庭の智治君の母思いにウルッときたり、真里さんと霧澤さんの幸せを願ってみたりと、私も三咲さんになった気持ちで読んでいました。その三咲さんが、遂に自宅に文庫を開設するまでの日々が楽しそうでした。美波さんとの友情も深まって、この後が楽しそうで続きが読みたくなっています。2020/02/13
ami*15
43
優しさと少しの懐かしさが漂う物語。「ちどり文庫」の入江さんを軸に本を愛する人々の物語が紡がれていく。私も真理と同じく小さい頃絵本を読むことを避けてきた人間なので、絵本との思い出がないことが凄くもったいないことだと思った。また昔から読み継がれる文学作品は多くの人を魅了し、世代は違っても作品の面白さを読んだ人同士で共有することができる。好きな本について楽しく語り合う小学生たちと入江さんの姿がとても羨ましく見えた。自分の世界を広げるために今まで手にしたことのない分野の本も少しずつ読んでいきたいと思いました。2019/09/01
はな
24
古い団地の中でママたちがしていたちどり文庫。団地という中で人とのつながりだったりが描かれている。ほんわか温かいだけではなく、その人が抱えている苦しさとか悩みが紐解かれて少しでもその重荷がほどけるような関わりがあり、昔のお互い様だったりつながりを感じさせてくれました。自宅を改装して本の貸し出しをするのはハードルは高そうだけれど、その団地の人向けでゆったりとするにはいいなぁと思いました。2021/08/25
coco夏ko10角
19
海岸そばの団地にあるというちどり文庫。表紙イラストと内容紹介「人と本のやさしい絆の物語」から想像したよりはちょっと重暗い感じだった。ちどり文庫の蔵書印かわいい。2021/05/11
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