文春新書<br> 内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男

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文春新書
内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男

  • ISBN:9784166612260

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内容説明

内閣調査室は本当に謀略機関だったのか……謎のヴェールを剥がす第一級の歴史史料!

松本清張は、昭和36年に「文藝春秋」に連載した『深層海流』で、「内調の役目がその辺を逸脱して謀略性を帯びていたとなれば、見逃すわけにはいかない」と書いた。あれから60年たっても、内調については関連する公文書も公開されなければ、組織の正史も作られておらず、依然としてその実態は謎のままだ。

本書は、昭和27年に吉田茂首相が、旧内務官僚の村井順に命じて内閣調査室が発足したときの、4人のメンバーの1人、志垣民郎氏の手記である。この手記のポイントは、内調は日本を親米反共国家にするための謀略機関だったのか、という問いに明解に答えているところにある。

志垣氏の主な仕事とは、優秀な学者・研究者に委託費を渡して、レポートを書かせ、それを政策に反映させることだった。これは、結果的に彼らを現実主義者にし、空想的な左翼陣営に行くのを食い止めた。そして本書には、接触した学者・研究者全員の名前と渡した委託費、研究させた内容、さらには会合を開いた日時、場所、食べたもの、会合の後に出かけたバーやクラブの名前……すべてが明記されている。まさに驚きの手記だ。

100人を超えるリストの面々は豪華の一言に尽きる。時代を牽引した学者はすべて志垣氏の手の内にあった。とくに重要なのが藤原弘達。「時事放談」で知られる政治学者は、東大法学部で丸山真男ゼミに所属した俊才であった。「彼が左翼に行ったら、厄介なことになる」。そこで志垣氏は、彼を保守陣営に引っ張り込むために、あらゆる手立てを尽くす。戦後思想史を塗り替える爆弾的史料である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

119
戦後日本で大きな役割を果たしてきた内閣調査室を日記を基に分析しています。吉田茂の肝いりのような感じで、共産党以外の学者などを取りこんでいくさまが会食などを基に描かれていて昔から政治家をはじめとするこのような人々は会食が好きだったということがわかります。委託研究を担った学者などとのやり取りがきめ細かに書かれています。2021/02/21

yamatoshiuruhashi

36
元内閣調査室主幹の志垣民郎の回想録を芯に構成された本。何とも不思議な体裁であり、内容も不思議。「内調事始め」的に読めばよいのか。日本の戦後史の一面であろう。因みに志垣民郎の甥の一人が俳優・志垣太郎、またALSOK(総合警備保障)の創業者。2019/10/21

サトシ@朝練ファイト

21
「どのような主義主張であれ、社会が一色に染まっては危うい」志垣氏の姿勢は、現在も続いているのか? 金渡して飯食ってシンパを増やす、維持する-シンパとなった方々の氏名も載ってます。2019/08/31

チェアー

18
日記の部分はざっとしか目を通していないが、宴会、会合の連続。世論形成とはこうやってやるものなんだ。時間をかけてキーマンを取り込む。取り込まれたほうは取り込まれたことに気づいていない。自由に発言しているつもりだし、時には政府に逆らっている。完全な御用学者や御用知識人より、適度に反発する人のほうが世論への影響度は強い。このやり方は、時間はかかるけど確実に浸透し、影響力は強い。恫喝したり、完全に反目してしまうようなやり方は逆効果だ。2019/09/17

月をみるもの

14
先週ちょうど大河ドラマ「いだてん」で学徒出陣式典が描かれていた。戦後立ち上がった内調の職員となったこの本の著者も、東大の学生として、その記録フィルムに映っているらしい。「いだてん」主人公の一人、田畑政治の朝日での上司緒方竹虎も、内調に関わった戦後の政治家として登場する。沖縄返還交渉の密使となった若泉さんが、東大の学生のときから内調に関わっていたというのが意外だった。。 https://bookmeter.com/reviews/569690512019/10/14

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