内容説明
事大主義とは、強者に追随して保身を図る態度である。国民性や民族性を示す言葉として、日本や朝鮮、沖縄で使われてきた。本書は、福沢諭吉、陸奥宗光、柳田国男、朴正熙、金日成、司馬?太郎などの政治家や知識人を事大主義の観点で論じ、時代の変遷を描く。日本への「島国根性」という批判や、沖縄への差別意識はどこに由来するのか。韓国と北朝鮮の相剋の背景は何か。自虐と侮蔑が交錯した東アジアの歴史が浮き彫りに。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
24
ウィキペディアで「事大主義」の項目を見ると、朝鮮半島や沖縄については現代に通じる重大な問題として扱っているのに対し、日本関連では豊臣秀吉の段階で話を終わらせている。我が国は事大主義とは無縁という思い込みによるのだろうが、かつては日本でも「長いものに巻かれる」国民性への懸念と論争があったことは、本書を読めばよく分かる。柳田国男の議論がピックアップされているのは、民俗学出身の著者ならでは。日本人の「自省」の歴史を振り返る上でも、事大主義というモノサシは使い出があると感じた。2025/08/07
さとうしん
17
明治期の日本で朝鮮の政治状況を揶揄する言葉として生まれた「事大主義」がやがて日本、沖縄の状況を批判する言葉として用いられるようになり、更には戦後の朝鮮半島にも持ち込まれるといった変転を描く。本書は言葉がひとり歩きしていくとはどういうことかという良い見本となっている。最後の、現代日本では「事大主義」が「空気を読む」といった場合の「空気」という言葉に置き換えられ、未決の問題として残されているという指摘が重い。2019/06/28
かんがく
13
著者は民俗学者。琉球や朝鮮を称す際に用いられる「事大主義」というレッテル貼りがどのように変化していったのかが書かれる。朝鮮併合後、事大主義は日本自身に向かい、朝鮮独立後に再び朝鮮に向かう。東アジアがお互いに事大主義批判をしあう状況は、中華思想から脱却できていないと感じる。2020/06/28
CTC
11
19年中公新書。著者は東大東洋文化研究所特任研究員(当時)、民俗学と近現代東アジア文化が専攻。 “事大”は大なるものに事える(つかえる)の意で孟子の言葉に由来。つまり“事大主義”とは“長いものには巻かれよ主義”だ(四字の成句としては本邦生まれ)。本書は柳田國男が日本人の気質の唯一の特色と挙げ、破滅的な戦争に向かわせた主因とまで考えたこの行動様式が「本当に国民性なのか」と問いを立て、この字句を巡る近現代史を視ていく。猿だってそうなんだから、本能なんじゃないの?とページを手繰るが…中々巧みな構成です。2024/09/02
Tomoichi
11
テーマは面白いのだがあれコレって岩波新書って感じる一冊。いつからアジア・太平洋戦争って言うようになったの?それなら大東亜戦争でいいやろって話。2022/08/18
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