内容説明
アヘン戦争後、一八四二年の南京条約によって開港した上海。外国人居留地である「租界」を中心に発展した街は、二〇世紀前半には中国最大の「華洋雑居」の地となり繁栄を極める。チャンスと自由を求めて世界中からやって来る移民や難民たち、英米日の角逐、勃興する中国の民族運動。激動の時代のなかで人々はいかに暮らし、何を思ったのか。本書は国籍別の検証を通じ、上海という都市独特の魅力を余すところなく伝える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
51
上海の租界の歴史を、イギリス、アメリカ、ロシア、日本、ユダヤと母集団別に書いた一冊。来月、中国出張を予定していて、実は上海はじめてなので予習として読みました。いわゆる「魔都上海」のイメージを、じっくり解像度高く形成できる稀有な本だと思います。中国の本をまとめて読んでみたいと思いました。2023/06/24
ハチアカデミー
11
B 戦間期上海という混沌としたトポスを、それぞれの国別に読み解く比較歴史学。政治家たちのいざこざを中心にするのではなく、あくまでそこに住み、生活をしていた人々を描く。「帝国」として上海に陣取ったイギリス・アメリカ、母国から逃れ、流れゆくままに上海にたどり着いたロシア人・ユダヤ人などなど、それぞれの事情と、各租界内での生活を知ることが出来る。そして日本人はといえば、文化人内山完造と孫文の交流、林京子の思いで話などが取り上げられる。比較文化の研究者だからこその視点で描かれた上海論である。これは良書◎2012/09/09
富士さん
6
再読。帝国主義によって生み出された中国の真空地帯に発生した、不思議な繁栄についての通史。こういう場所だからイデオロギーや政治制度の恣意が限りなく少ない自然発生的な文化の混交や集団の動きを見ることができる稀有な実験場であり、何とも言えない魅力を現在でも漂わせており、それをうまく救い上げた良い本だと思います。個人的には、東アジアで初めての長編アニメを作り、その後も中国のアニメ作りの中心であった上海の背景を知るために読んだのですが、アメリカの影響を強く受けた映画産業と映画文化についても触れられており、満足です。2021/02/07
なつきネコ@小学校に入学した化け猫
6
いろいろな視点から、上海を描き解りやすい、しかし、私は単純に、高杉晋作の体験談から外人は中国人をこき使っていると思っていたけど、実際は社会主義から逃げたロシア人や、ナチスから逃れたユダヤ人などがいた事に驚いた。しかし、魔都など呼ばれた上海が音楽や映画の都だったとは、本当に印象が変わった。上海の歴史を知るにはいい入門書。2013/03/22
あくび虫
5
面白かった。上海=魔都という印象はあるけれど、その実質について触れたのは初めて。20世紀前半の繁栄というか、狂乱というか……とにかく、その極彩色の有り様には、文字の上からでも惹きつけられるものがあります。ベルリンを連想しますね。2017/09/06