内容説明
彼には同棲している男がいる。私は彼が来てくれた時に迎え入れればいいだけで、彼を望む権利などない―(『星へ落ちる』)。彼の彼氏に嫉妬する『私』、彼に女の影を感じて怯える『僕』、出て行った彼女を待ち続ける『俺』。相手を愛おしいと思えば思うほど、不安で押し潰されそうになってやり場のない感情に苦しんでしまう男と女と男を、それぞれの視点から描き出した切ない恋愛連作短編集。
目次
星へ落ちる
僕のスープ
サンドストーム
左の夢
虫
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
142
恋愛モノは苦手なのだが、タイトにひかれてよんでみた。オトコと男と女がいて、その中で一人のオトコが中心に居る時は、このパターンよりもオトコが女と一緒に住んでいて他の男と浮気する方が強烈だと思う。小説として読んでみたいと思う。この作品のパターンの浮気は想像しにくく、感情が入らず。他の人からの愛情に真摯に向きあえないなら、自分も愛する人からのまともな愛情は手に出来まい。本当はみんなが付き合いたいと思う私なのに、俺なのに、この人はなぜ?...、なんて思ってる人たちには、まともに向かい合う真心が欠けてる。 2019/01/11
ゆいまある
89
連続短編集。貧しい男と暮らしてた。でも作家デビューしたらインテリ男を好きになった。ここまではトリップトラップでも繰り返されているので、おそらく金原ひとみの実体験がベース。お互い恋人がいる身で恋に落ち、嫉妬に狂い、「彼(この作品には一度も固有名詞が出てこない)」以外の3人は自傷を繰り返す。自傷シーン激しめ。成功して幸せだったのかな。低学歴彼と暮らしていた頃のほうが不安でも苦しくもなかったよね。でもナルシストだから一生貧乏には戻れない。そんな気持ちが透けて見えて生き辛いのは自分だけじゃないと思えて安心できる。2022/04/20
ちょこまーぶる
60
この分野の領域は不得意なだなぁ~と感じた一冊でした。いつもはあまり深く考えながら読んでないから、男女の濃密な人間関係の駆け引きや感情の起伏などを感んじながら読むことに不慣れだから、今一つ本の世界に入り込むことができませんでした。そして、読み進めて誰の考えが正しいのか?誰の判断が正しいのか?と考えていました。でも、間違っているかもしれないけど、男女の間でこれが正解ということもないのかなとも思いましたね。2019/12/30
ころこ
39
連作短編なのを3作目へ来てから気付く。そして最初から読み直した。初出がバラバラで、単独で読めるのは固有名が無いからだ。「僕」という人称がゲイなことによって人間関係を分かり辛くしているが、同時にそのことによって固有性を見つけられている。相互の語り手から描写されることで、登場人物兼語り手の人物像が時間差でつくられていく仕掛けになっている。登場人物はメンヘラなのだが、その平板には辟易する。元彼だけがノーマルそうな鈍感な男で、その文章だけがしっかりしている。作者の描くアンバランスさの世界は独特だ。2023/11/13
♡手嶋♡
26
「ずっと一つの星を見上げてると、自分がその星に落ちていきそうな気がしてこない?」あーあるある。わかる。星が自分に、じゃなくて自分が星に、その感性は私もすごい大好き。欲しい物はいくらでも持ってるのに、一番欲しい者はどうやっても手に入らない。情熱的なんだけど、片隅ではぶっさめてる。傷の舐め合い。金原さんあるあるだけど、やっぱこれがないとね!ってなっちゃう。読み終わった後のこの脱力感、気持ち良い。そのまま一週間くらい余韻に浸っていたい感じ。読者まで一緒に落ちる。なんとでも言えるけど、好きになったら負け、以上! 2016/10/06