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内容説明
新聞社の科学記者として科学を伝える仕事をしてきた著者は、2015年、科学の新たな地平を切り開いてきたアメリカで、特派員として心躍る科学取材を始めた。だが、そこで実感したのは、意外なほどに広がる「科学への不信」だった。全米各地での取材で、地球温暖化への根強い疑問や、信仰に基づく進化論への反発の声があちこちで聞かれた。その背景に何があるのか。先進各国に共通する「科学と社会を巡る不協和音」という課題を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
37
朝日新聞の金成記者の「ルポトランプ王国」は良書だったが、読売新聞の三井記者の本著も良書です。アメリカにはびこる「科学不信」の現場を歩き、その内実を探る。進化論ではなく創造論を信じ、地球温暖化は人間のせいではなく自然に起きていると考える。こうしたアメリカ人が多いという事実に愕然としつつも、著者は人間は自分が思っているほど理性的に物事を考えているわけではないと指摘する。知識のあるなしではなく、その人の思いから反科学的な判断をしているという。論理よりも感情や共感が優先するのが実は人の世なのか‥言い得て妙ですね。2019/10/06
樋口佳之
34
産業界とキリスト教の保守的なグループという、一見かかわりの薄そうな二つのグループが力を合わせ、科学に反発する集団/科学分野担当の記者である著者の、アメリカの反科学的状況と科学側が考えるべき事についてのルボでした。/人類の知性はそもそも、「地球が太陽の周りを回っている」という客観的な事実を突き止める手段として進化してきたわけではない/二点。原爆を製造した知見もまた科学であった事の問題性(スミソニアン博物館の原爆展示騒動思い出した)への考察が無い、ローカルな知への言及が無いのが気になりました。2019/06/18
パトラッシュ
32
アメリカでは大統領や学者がどれだけ理性的に訴えても、自分の利害や信仰や思想に反する主張は科学的証拠を山積みされても一切受け付けない。彼らは善良な市民であり、自分たちの理解の及ばぬ科学に根強い不信を抱いているのだ。他人の言いなりにならず、日本で問題視される「同調圧力」や「空気を読め」など皆無だからこそである。トランプが大統領になれたのも、こうした庶民の感情を巧みにすくい取った結果だろう。しかし科学の側も反対者を説得しようと努めてこなかった。この分断を結びつける方法を模索する人々の姿に、一抹の希望を感じたい。2019/06/19
くさてる
27
人は「科学」は苦手で、科学的にあり得ない事を信じたり(地球は平たい!)、非合理的な言動を選んでしまうことがある。そんな人に科学の側の人間は、どう働きかけていけばいいのか……という問いかけの一冊。コロナ禍の現在読むと、さらに身につまされて、ほんとうにもう、どうしたらいいんでしょうねという思いになりました。それでも、「科学不信」の現場からはさまざまな動きがある。わたしはまったく理系でないけれど、科学と文明の進歩に助けられてきたという思いがあるから、これからもそれを支えていきたいです。2021/04/17
kitten
21
図書館本。科学がどうして伝わらないのか?アメリカでトランプ大統領が何をしたか。どうしてトランプが当選したか、という話。アメリカの分断はかなりやばいレベルで。共和党支持者は、温暖化を否定しなければいけなくなっている。進化論を否定して創造論を信じている人の方が多いとか。科学者としては、データだけ示していればよいという話ではなくて、「信頼」と「共感」が必要。知識は「心」を通って「頭」に届く。心を通り抜けるように伝えないと伝わらない。これは、私の仕事上でも大事なところ。すごく参考になった。2020/11/25




