内容説明
明治40年の栃木県谷中村。足尾銅山鉱毒事件をめぐり、官憲と立ち退き反対の農民側とが激しく対立するさなか、反対派の巨頭・田中正造の側近で谷中村土地収用反対派の残留農民の勝野が殺された。凶器は、鉱毒事件の告発者・田中正造の杖。はたして正造が犯人なのか、それとも巧妙なデッチあげによる官権の策謀か、はたまた反対派の内部抗争か……。歴史推理に社会問題を鮮やかに導入した傑作長篇。第20回江戸川乱歩賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーコ・オクダ
24
足尾銅山鉱毒事件…社会科の教科書に出てきたなぁ、と。勉強熱心でなかったワタクシでも、意外とスイスイ読めた。北関東タイムスの記者・藤田がストーリーを引っ張ってくれる。被害農民による押出し、川俣事件、田中正造による明治天皇への直訴、そして谷中村の廃村…史実バッチリの中に、密室殺人から始まる連続殺人が盛り込まれる。小林センセ、あまりにもフェアに犯行ポイントを示してくれるもんやから、犯人はすごいわかりやすく(苦笑)でも、その背景の濃ゆい部分、歴史推理、社会派推理の両方にまたがってるところを描きたかったんやと思う。2021/02/19
hit4papa
23
日本初の公害事件である、明治の足尾銅山鉱毒事件を背景とした社会派ミステリです。ときの権力者やその利権に群がる人々と、正義を貫こうと行動する人々との軋轢の中発生した密室殺人。第二、第三の殺人を追う地方紙のいち記者が見た真実とは。田中正造の事績など歴史的事実を調べながら読み進め、背景そのものにいたく興味をそそられました。直木賞候補の作品だっただけに、文章が上手ですね。民衆に対する非情ともいうべきな圧力に、ふつふつと憤りさえ覚えます。トリックが現実的かはありますが、顛末の意外性は堪能できるでしょう。【乱歩賞】2017/08/20
こうてん
1
第二十回乱歩賞作。こういう賞をとるのには「密室」って必要? この小説には全く必要ないと思うが。無理やり埋め込んだ「密室」や「アリバイ作り」より、犯罪者の動機や心理に重点を置いて欲しいなぁ。2012/10/08
tko
1
密室作りに無理がある。杖を弓の矢にするなんていうのはこれが本当の「無理矢り」だネ。 沖縄の土地収用の様子も映画「沖縄」で泣かされたが、足尾銅山の土地収用も残酷だ。時の警察を含めた権力者の権力乱用や横暴さには空しくなる。 あれから100余年。今の民主性を良く勝ち得たものだ。2012/09/05
もぐもぐチョビたん
1
乱歩賞第20回。 明治40年、足尾銅山鉱毒事件を扱った連続殺人事件。田舎新聞記者が謎に迫る(`・ω・´) 古いけど興味深く読んだ。仕方のないことだけども暗い話だ。全体的に地味かな(..)2012/01/24
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