内容説明
スマホやパソコンでは、嬲、娚、娵、啌、鯲、蟶、妛といった不思議な文字を打つことができる。しかし、いったいどう読むのか、何に使うのか――。これらの漢字の由来を徹底調査。また、江戸時代の五代目市川團十郎が先代「海老蔵」を憚って自分はザコエビだから「鰕蔵」と称したという説を検証する。さらに「止めるかはねるか」等、テストの採点基準を科挙にさかのぼって大探索。漢字の不思議をめぐる楽しいエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てつ
56
仕事柄漢字は常に悩みの種。変換できなかったり適切な漢字がわからなかったり。そんな成り立ちを丁寧に説明してくれている。良書。地名と絡めると自分の興味にぴったり。再読ありかも。2017/07/01
へくとぱすかる
46
三部構成の第1部は、笹原先生の著書ではすっかりおなじみの、地名をめぐっての国字の未紹介のエピソード。これが最もよかった。第3部は、中国の科挙の実態について。文章の内容でなく、字の正しさ・美しさにこだわって、国に必要な人材を逸していった清朝の歴史は、まさに教訓。日本の学校で漢字の細部にこだわっての指導・採点が今もなされていることに、危惧を覚えてしまう。2017/05/03
かごむし
28
漢字を専門にする学者が、ちょっと気になったことを調べてまとめてみました、というような本。この、ちょっと、の中にものすごい時間と情熱と労力が注ぎ込まれていて、調査結果だけでなく、調査のための思考や方法についても丁寧に記述されており、このテーマに興味があまりない読者にも、読み応えのあるものになっている。ふとした時に疑問に思ったこと、興味を持ったことを、調べてみなよ、研究してみなよ、それはとても楽しいことだから、と著者に呼びかけられているかのようだ。もちろん漢字の持つ歴史と文化の豊かさも感じ取れるよい本だった。2018/03/30
ひよピパパ
23
現存する謎の漢字について解説する。地名としてその漢字を使っていたことがその理由との由。勉強になった。ただ、調べてわかるまでの過程がクドクドと書かれていてやや苦痛。グッと圧縮した密度の文章を求めたい。第三部科挙の話はとても有益。漢字と科挙にまつわるいろいろなエピソードが紹介される。清の雍正帝の治世では「維民所止」を出題した試験管が皇帝の頭を切り落としているとして処断されたとか。同じような言いがかりは日本のどこかでも聞いたような。漢字文化圏のもつ悲哀とでも言えようか。2024/12/20
シンショ
13
なかなか難しい文章であったが著者が主張したい本質的な部分は理解できたと思う。「海老」と「蝦」の違いは何となく立派そうな「海老」に対し、小さな「蝦」というイメージを持っていたが、それをトコトン突き詰めていったのには著者の執念を感じた。以前から書き順やトメ・ハネの違いで「×」をつけることに疑問を持っていたので、そこを指摘してくれたのは良かった。2022/02/28