内容説明
すごい経営者がいた! 日本オリジナルの合成繊維の事業化、そして国交回復前の中国へ――。敗戦後の日本人の誇りを取り戻させた大原總一郎の激動の人生を描いたノンフィクションノベル。松下幸之助に「美しい経済人」と評された稀代の経営者・大原總一郎――。数々の分野でシェアNo.1を誇る企業=現在のクラレを創り上げた男の生涯は、波乱に満ちたものだった。国産第一号の合成繊維「ビニロン」の事業化や、国交回復前の中国へのプラント輸出……。激動の昭和史を背景に、“百年先が見えた経営者”と言われた男の生涯を描く感動の企業小説。『天あり、命あり』を改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
PEN-F
35
化学メーカーのクラレのお話。今でも機能性樹脂の分野では世界でもトップシェアを誇るクラレの強さの真髄が分かる。2023/05/14
まつうら
32
「独自の新しい技術でイノベーションを起こしてこそ発展がある。」 この作品は大原總一郎のこの言葉に尽きるのではないだろうか。大原が日銀総裁の一萬田尚登との面談で語った言葉だ。この言葉が一萬田を決断させ、合成繊維ビニロンが花を開いていく。この偉業を称えて、クラレの後継者たちは大原のことを、百年先が見えた人だったと語る。そして先代であり実父の大原孫三郎は、城山三郎の作品によると「わしの目は十年先が見える」と語っている。大原親子の慧眼によって日本の繊維産業と化学工業があるという事実には、もはや敬服しかない。2022/03/12
ひさしぶり
21
第二回日米民間人会議の總一郎のスピーチがいいじゃないか。中国へのプラント輸出交渉に右翼からの脅迫はなかった、政治献金もしなかった、その上で自国の政治家のだらしなさ、アメリカの了見の狭さまでぶちまける。(履いているうちにヌルヌルになり、靴の中で靴下がコンニャクのようになる)出来損ないのビニロンを研究、開発、販売一体で魚網、ロープ、学生服まで利用拡大。ランドセルのクラリーノのクラレの経営者の話。2023/07/24
ちえちゃん
13
倉敷クラレを創り上げた大原總一郎の半生。誰もがやろうとはしないビニロン開発への熱意、ブレない態度。それに感化される社員。短所も個性、個性を活かす開発。柔軟なものの考え方。利益より社員の幸せ。困難を楽しんでしまう。これらをギュッと凝縮した人物だった。いろいろ難しそうな製品もあるがマジックテープやフードコートのメッシュふきんまでもがクラレ製品だなんて、本書を読んだ後では見る目が変わってしまう。2019/11/10
たまご
11
倉敷に根を張る大企業「クラレ」の経営者である大原總一郎の物語。倉敷の美観地区へ旅行に行き、クラレに興味を持ったので読みました。会社は本来「金儲けをするため」に存在するものではなく「社会や人々の役に立つため」に存在していると改めて。人の役に立つなんて聞くと以前までは「綺麗事でしょ〜」と感じていた節もあったが、最近は少し考え方が変わってきているかも。「どうやったら人々の役に立てるか?」→「それを利益に繋げるためにはどうすれば良いか?」という順序で物事を考えているんだろうな...。利益は結果であり目的ではない2022/08/22