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内容説明
驚くべき創作意欲に一生を捧げた稀有な作家、栗本薫/中島梓。彼女の担当編集者であり夫であり、いちばんそばにいた最大の理解者である今岡清が、作家の知られざる素顔を交えながら、その挑むような生き方、苦悩そして想い出をゆるやかに綴る貴重なエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
42
栗本薫没後10年。夫である今岡清が、彼女の思い出を語る。今岡は、評伝のようなスタイルで栗本薫の書くには、自分は情緒的になり過ぎるとして、あくまで夫の視点から妻を語ろうとする。実際に本書は、かなり情緒的なのだが、とはいえ今岡は夫であると同時に、小説家・栗本薫を育てた編集者でもある。評伝として栗本薫を書いてほしかったという気持ちは、正直ある。だが、本書を読み進めていくと、今岡が伝えようとしていることが、小説家として以前の、人としての彼女だったことが理解できる。(つづく)2019/05/03
瑪瑙(サードニックス)
32
私が中島梓さんを知ったのは某テレビのクイズ番組でした。それから興味をもって著書を読み始め、さらに当時SF好きだったので『グイン・サーガ』を読んだことで栗本薫さんの名前を知りました。著者の顔が同じ?と思って調べたら同一人物でした。その才能豊かな筆致と作品に益々のめり込んでいきました。その夫となられた今岡氏が綴った素の彼女の顔。驚きました。IQ152の天才はやはり狂気と隣り合わせだったのですね。育った環境の影響もあったのでしょうが、こんなにも苦しまれていたなんて。でも彼女への尊敬の念は変わりません。2025/02/10
くさてる
32
ただもう痛ましい。痛ましくてしかたがない。ずっと栗本薫のファンだった私だけど、その夫である著者が語る彼女の姿と、彼女の能力と個性を抱擁し許し認めてきた過程が、ほんとうに辛かった。彼女を語るに欠かせないこととして、夫婦間の可愛くもあけすけなやりとりを正直に書きつつ、いくらでも暴露的にも扇情的にも書けたであろう別のことを、あえて避けて控えめに描写している。その上品な筆致が、同時に、この今岡清という人が栗本薫のさまざまな弱点をも誤魔化さずしっかり見据えていたということを私に教える。ほんとうに、痛ましい。2019/05/29
marumo
21
物語にトリップしてしまって頭がずっとフワフワして現実感が薄くなる…という読書体験を「グインサーガ」で初めてしたのでした。クリスティや木田圭子を読んだのもこの人の影響なので、栗本薫は読書の師匠でもありました。エッセイで「わ!なんか嫌だわこの人」と思うこともあったけどやはり特別な作家。「愛しのリリー」の変な会話がリアル夫婦の会話だったことに妙に納得。ケンとリリーは今岡さんと栗本薫だったのか… 2019/09/24
さーくる・けー
16
稀代のストーリテーラーである故・栗本薫の実生活を、最大の理解者かつ夫である今岡清が綴ったエッセイ。何事に対しても尽きせぬ創作意欲に驚かされるとともに、亡くなる直前まで創作に傾注した姿に切なさを感じました。こんなに狂気のような執筆量で絶え間なく物語を紡ぎだす小説家はもう現れないと思います。亡くなって10年過ぎてしまいましたが、自分の中では最も愛する作品は「グインサーガ」のままで、おそらく生涯変わらないと思います。栗本さんで完結して欲しかったな。2019/05/31