文春文庫<br> サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

個数:1
紙書籍版価格
¥1,122
  • 電子書籍
  • Reader

文春文庫
サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

  • ISBN:9784167912895

ファイル: /

内容説明

1999年のラスベガス。ソニーは絶頂期にあるように見えた。しかし、舞台上でCEOの出井伸之がお披露目した「ウォークマン」の次世代商品は、2つの部門がそれぞれ別個に開発した、2つの互換性のない商品だった。それはソニーの後の凋落を予告するものだった。
世界の金融システムがメルトダウンし、デジタル版ウォークマンの覇権をめぐる戦いでソニーがアップルに完敗し、ニューヨーク市役所が効率的に市民サービスを提供できない背景には、共通の原因がある。それは何か――。謎かけのようなこの問いに、文化人類学者という特異な経歴を持つ、FT紙きってのジャーナリストが挑む。
企業であれ自治体であれ、あらゆる組織は「サイロ化」という罠に陥りがちである。分業化したそれぞれの部門が、それぞれの持つ情報や技術を部署の中だけでとどめてしまい、隣の部署とのあいだに壁を作ってしまう。日本語では「タコツボ化」と呼ばれるこの現象は、どんな組織でも普遍的に存在する。
経済学的な観点からすれば、身内での競争を生むような「サイロ」は無駄であるから、トップが「サイロ撲滅」の掛け声をかければ解決に向かう、と思いがちだ。ソニーの新しい経営者・ストリンガーも最初はそう考えた。しかし、彼は失敗した。壁は極めて強固で、一度できたサイロは容易には壊れない。
文化人類学者の視点を持つ著者は、「サイロ」が出来るのは人間に普遍な原因がある、と説く。人間に求められる技術が高度で専門的になればなるほど、サイロはむしろ必要とされるからだ。
人間は必ずサイロを作る、ならば、その利点を活用しつつ、その弊害を軽減する方法を探ろうとする画期的な論考が、本書である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たつなみそう

9
面白い!サイロ(タコツボ)化はあらゆる分野で生じ、深刻な事態につながる。ソニーのデジタルウォークマンがiPodに勝てない理由、お墨付きの銀行が巨額負債、クリーブランドクリニックやフェースブックのサイロ打破の工夫など、具体的な失敗と成功がリアルに語られる。組織が巨大化すればサイロは必然である。サイロ打破には、部門の境界を柔軟に、交流促進の場作り、インセンテイブ、情報の流れ、専門部間を行き来する「文化の翻訳者」、いずれも納得できる処方箋だ。自分の分野でも同じことが起こっているが、サイロを壊すのは容易ではない。2023/12/14

スプリント

7
カンパニー制を採用しても人材の流動性が保てれば効力を発揮する。経営層が事業の選択と集中しやすいなどカンパニー制のメリットはあるが、たいていはサイロ化して全体の生産性が落ちてしまう結果になる。2019/08/13

Mark X Japan

5
実例は分かりやすいものとそうでないものもありました。日本人には,ソニーが最も身近なサイロの例でしょう。細分化は仕方ないですが,たこつぼにならないように参考にしていきたいです。何かのきっかで有名になりそうな一冊です。☆:4.02020/05/10

ちくわ

4
いわゆる縦割り化した組織の失敗事例とそれを破壊する事例を紹介する形となっている。当然のことながら課題の解決に当たっては高度な専門的知識は必要となってくるので、専門的な知見を有する組織の単位は必要であるものの、それを前提にどうするかは考える必要がある。よく言われるところだと、「情報共有」というものはあるものの、それだけで解決するわけではなく、インセンティブの構造等も考えていく必要があることは本書の事例を通してよくわかる。書き物としてはそうだろうと思うが、実際にやり遂げるとなるとその労力や中々想像しきれない。2022/08/12

TK39

4
以前、話題になった本が文庫になり購入。以前、カンパニー制が流行したがサイロ化し、失敗。まだ、カンパニー制に固執している会社はあるのだろうか。日本人は同質性を好むので規模が大きくなると厳しいか。強力なリーダーシップがあるうちはまだまとまっているが、トップが変わると途端にダメになる組織も多そうだ。インサイダー兼アウトサイダーが必要、確かにそうだがその声を拾って広げていけるか?色々と難しい課題があります。2019/06/08

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13648606
  • ご注意事項