内容説明
青森県五所川原市にある一軒の農家の屋根裏から、膨大な数の古文書が発見された。当初は新たな古代文明の存在に熱狂する地元。ところが1992年の訴訟をきっかけに、その真偽を問う一大論争が巻き起こった。この「東日流外三郡誌」を巡る戦後最大の偽書事件を、東奥日報の一人の青年記者が綿密な取材を重ね、偽書である証拠を突き付けていく──。事件後見えてきた新たな考察を加えた迫真のルポ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
108
たかがニセ物の本、と思うのが、いかに危険かということを教えてくれる事件。「戦後最大」も決して誇張ではない。偽作は金銭、名誉のためだったかもしれないが、内容を信じ込んだ人々の傷や後悔の大きさは計り知れない。偽史研究の原田実さんを協力者にして最後まで追求を続けた斉藤さんは、穏やかながら、新聞記者としてジャーナリズムの良心をきちんと通したのだ。2019/04/18
国士舘大学そっくりおじさん・寺
83
読メを始めて以来、読メが楽しいあまりに1冊でも多く登録したくて、せっかく面白い本と出会っても再読する事がほぼ無くなってしまっていた。次々に新世界に触れるのは良いが、汲めども尽きぬ知識の泉のような無二の1冊を見失って久しい。この本も今は無き新人物文庫版で読んだので別にいいかと思っていたが、何と原稿100枚近く加筆&修正の上に『ガンダム』の安彦良和のカバー絵というカスタマイズ&ビルドアップ。こりゃまた読むしかないと思い挑んだところ、やはり無茶苦茶面白かった!。おすすめ太鼓判である。超古代史の嘘が続々と。是非。2019/04/14
hatayan
80
史実を記したとされる古文書が、実はすべて事実を装った創作だった。青森の地元紙の記者が偽書事件の一部始終を10年以上にわたって追いかけたルポ。偽書がはびこった背景として、一見して偽物とわかるものは相手にせず黙殺するという学会の常識があったこと、津軽地方には中央に対抗する勢力が古代からあったとする物語が屈折しがちな東北人の「ニーズ」に見事にはまったことを挙げます。オカルト的経験は科学的知識の有無に関係なく、いつ誰に訪れてもおかしくない思想的ウイルスであるとする指摘が重い一冊です。2020/08/29
Nao Funasoko
77
高橋克彦『竜の柩』やとり・みき『石神伝説』などは読んでいたので「東日流外三郡誌」を「つがるそとさんぐんし」と正しく読める程度には好物だったが本書は未読だった。読めば読むほど、なんでこんなインチキに役所も学者も簡単に引っかかってしまうのだろう??と思うのだが。歴史と風土と憧憬とか絶妙な配合でブレンドされるとマジックにかかってしまうのかな。著者による執拗な追及は臨場感溢れており、事件全容を理解することができた。先日読了の『津軽』に引き続きの青森ネタシリーズ。ますます青森へ行きたくなってきたぞ。WW 2019/04/09
gtn
45
「東日流外三郡誌」は和田喜八郎による捏造であることは間違いない。興味があるのは、少し検証すればすぐ偽書と疑われる代物を、なぜ地元市浦村は村史資料編として刊行してしまったのかということ。村とすれば、当時全国的に話題となった本書を名誉と感じ、税金を使って村おこし的に利用しようとしたのだろう。決して馬鹿にするわけではないが、「田舎者」と言わせてほしい。2019/08/20
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