内容説明
日本海の隠岐島。討幕の2人の天皇が流された勤王の地。尊王攘夷派の若き庄屋・井上甃介は、幕末、農民3000人を集めて武装蜂起。幕府寄りの松江藩を島から追放し、世界初の自治政府を立てた。王政復古と維新に、夢をかけた男たち。だがその理想は、新政府に裏切られる。大いなる志を胸に闘い、倒れた若き志士たちの青春と復讐、再起を描く、激動の幕末維新ロマン!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
31
幕末、討幕の二人の天皇が流された勤王の島・隠岐の島で起こった尊王攘夷派の武装蜂起事件「隠岐騒動」が描かれる。あとがきに「歴史は、生き残った勝者が作る。勝者の名とその正義だけが、後世に伝わる。」とあるが全くその通り。知られていない事件に陽をあてて読者に提供していただいた著者に感謝。ノンフィクション風ながら冒頭の関係写真や挿入画にも助けられて、いつの間にか物語に引き込まれる充実作。東京城へ移された天皇を奪回して京に環幸り頂く挙兵「外山・愛宕(とやま・おたぎ)事件」も初知り。2019/11/16
天乃かぐち。
7
知らないことが多くあって驚きました。地方部と言える隠岐諸島にある和漢の文献蓄積にも驚かされました。2023/08/11
SAT(M)
5
幕末を扱った作品でありながら、その舞台は江戸でも京都でも薩長でもなく隠岐島。農民たちが藩の代官を追い出し、打ち立てた自治政府の樹立と崩壊が描かれています。「民衆の反乱」モノでありながら、決して民衆サイドを絶対正義とするのではなく、その矛盾や暴走も描写されており、逆に「悪役」である松江藩内にも時流に流され理不尽な死を遂げねばならなかった藩士もいたというように、単純な善悪二分式ではない、イーブンな視点と複雑な時勢描写に引き込まれました。隠岐、行ってみよっかな。2016/07/17
熱東風(あちこち)
4
好著。/ただ、どちらかというと騒動の中心人物数名をフィクションを交えつつ描いているので、歴史的に偉業を成し遂げているはずなのにそのダイナミズムを感じるにはやや迫力不足の感は否めない。もっとも、農民が主体である故に、権力者である武士と対等に渡り合うことにかなりの力を注がざるを得なかったという背景はあるだろうが。/とはいえ、幕末~維新の時代で殆ど知られていない出来事を世に知らしめたという点で大いに意味のある書だと思う。巻頭に地図を載せてくれているのが親切で(広域~詳細三種類)、読み進めるのに大いに助かった。2016/10/16
活字の旅遊人
2
隠岐騒動。こんな歴史があったのだ。