内容説明
大伴家持(七一八頃~七八五)は、天平文化を代表する歌人であり、『万葉集』の編纂にも関わったとされる。橘奈良麻呂の変など、無数の政争が渦巻く時代を官人として生き、さまざまな美しい景色や多くの親しい人々との思い出を歌に込めた。その歩みを追うと、時代に翻弄されながら、名門一族を背負った素顔が浮かび上がる。本書は、残された資料と各所で詠んだ歌から、謎の多い彼の全生涯を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
33
告白すると、僕には歌の良し悪しを判断する素養がなく、しかも本書は、家持の人生航路に多くの紙幅を割くので、彼の残した歌がいかに素晴らしいものかは正直最後までわからなかった。しかし、資料にも制約がある中での執念のような研究成果ともいうべき本書により、家持が大貴族の子として若い頃に叙任され、都で、あるいは地方で要職を歴任し、国を背負う責任感、昂揚感、また藤原氏台頭という政争に巻き込まれ、多くの友人を失う苦悩などが、歌とともに再構成される。彼の見た景色が目に浮かぶようである。まさに新書の楽しみを味わう読書だった。2018/08/24
やいっち
29
古代史や万葉集に関心があるし、なんと言っても大伴家持は越中国司として赴任し、越中滞在中、万葉集に収められている家持の歌、約470首のうちの半数を作った。但し、我輩の一番好きな万葉歌人は、柿本人麿。 ただ、著者が富山県(立山町)の出身者であるということ、何と言っても、扱われている人物が大伴家持であるだけに、手に取るしかなかった。 これまでも、柿本人麻呂関連ほどではないにしても、大伴家持や万葉集を巡る本を読んできた。2018/01/08
こぽぞう☆
25
歌人としての家持は割合と知っているつもりだったが、官僚としての家持はここで詳しく知った。大和朝廷からの名門、大伴氏、中納言まで登った。ちょうど藤原氏が官職を独り占めしつつある時期にあたる。和歌も多く収録されているが、長歌は全文載っていないのがほとんど。私は長歌が好きなので残念。2017/06/26
sine_wave
13
富山県には家持の歌碑が多くあるし、家の近くの公園にもそれらの一つがある。しかし家持に関して、越中国守であったこと、万葉集の歌人・編纂者であった以外に知識はなかったが、本書で中央政界での重要人物であったことを認識し、それにともない中央の様子を垣間見させてもらった。2018/02/15
はちめ
10
編年体で大伴家持の作品を追いながらその人生を描くというスタイル。淡々と書き進められる。もう少し面白おかしく書けそうな気もするが、それは読者に委ねられているということなんだろう。万葉集編纂との関係とか死をめぐる謎にはもう少し迫って欲しかった。良著です。2017/07/18
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