内容説明
中欧文学巨匠の奇想天外な語りが炸裂する、悲しくも可笑しいシュールな大傑作。ナチス占領から共産主義へと移行するチェコを舞台に、給仕人から百万長者に出世した主人公の波瀾の人生を描き出す。映画化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
393
チェコの現代文学。一見したところでは難解さはない。ただ、その平易さに潜む作者のたくらみを読み解くのは一筋縄ではいかないように思われる。まずタイトルからして曲者である。「英国王に給仕した」ズデニェクを主人公(語り手)のヤンも(最初はともかく途中からは)我々読者も信じることができない。同様にエチオピア皇帝ハイレ・シエラシエ(なんと実名である)に給仕したヤンが、勲章を後生大事に持ち歩くのもわからない。わからないことは他にも多々ある。ヤンがいとも簡単にナチス(orドイツ人)に傾倒したこと、妻の死と息子との⇒ 2022/01/14
ヘラジカ
64
全集を集めていたとき買いそびれていた作品なので文庫化を機に購入。珍奇なエピソードの数々が、圧されるくらいの勢いでひたすら語られていく。南米文学によく見られる饒舌さ。長編小説というよりも章ごと表題作を持つ掌篇集のようだ。油断してると話が終わったのを認識せぬまま次の思い出が始まってしまうため、語り口の軽快さの割には物量を感じる。内容もポップだったりロマンティックだったりする一方、エロティックなものやブラックなものまで様々あるので、疲労はあっても全く飽きさせない。流石は池澤世界文学に選出されただけある。傑作。2019/03/11
三柴ゆよし
50
これはとんでもない。労働とお金儲けをスラップスティックな語り口で描く前半は基本的には笑って読めるが、中盤以降、ある歴史的事件を前にした語り手の選択と行動により、ギョッとするような不穏さグロテスクさが物語の後景となり、最後にはなんとなくほっこりとした孤独のうちに自閉していく。饒舌な語りはたしかにだれか不特定の聞き手を想定したものだが、最後まで読んだ読者は、彼の全体像が近づいてくるというよりもむしろ遠退いていくように感じるのではないか。終始にこやかなのに目はまったく笑っていない系の怖さをおぼえる小説だった。2019/06/09
zirou1984
33
文庫版で再読。初読時にも圧倒された、矢継ぎ早に繰り出される破茶滅茶なエピソードの数々はやはり格別に面白く、語りの力に圧倒されてしまう。しかし改めて読んで思ったのがドイツ占領時のチェコにおける、主人公の所謂「名誉白人」的に独側と同化しようとした立ち位置の危うさと不穏さ。それは牧歌的世界観に緊張と葛藤という裂け目を生じさせ、本書のタイトルにもアイロニーが含まれていたのだと気づかせる。終盤における達観した眼差しに戸惑いながらも、やはりとんでもない傑作だという読後感は揺るがない。フラバルの作品は本当に最高だ。2020/04/22
ネムル
26
再読、あらためて傑作と思う。激動の時代を前に己を陶冶する健全な教養小説はもう古く、ドイツ・ソ連と大国に挟まれた小さなチェコの、悪夢的で韜晦を思わせる教養は「お前は何も見ないし、何も耳にしない。でも、お前はありとあらゆるものを見なきゃならないし、ありとあらゆるものに耳を傾けなきゃいけない」だ。このルールを課した小人の語りは酔いどれの如く際限がなく視覚情報たっぷり(特に一章の水車に舞うパンツ回収ババアが最高)で、苦手なひとも多そうだが、なんの水(麦酒?)があうのか夢中で読んでしまった。2019/06/10
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