内容説明
とつぜん届いた犯人の手紙から、「雲づる式」に明かされる、「わたし」の奇妙な過去――読売文学賞と芸術選奨文部科学大臣賞をダブル受賞した傑作長篇「雲をつかむ話」。レネの義兄モーリスの家を借りるためにハンブルグからボルドーへ向かった優奈――言語・記憶・意味・イメージの間をたゆたう断章が収斂する「ボルドーの義兄」。『献灯使』で全米図書賞を受賞し、いま世界でもっとも注目を集める日本人作家の贅沢な作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
62
〈大学図書館〉多和田作品には外国にいる自分、という圧倒的な孤独感をいつも感じる。収められている二編は、どこから切っても読めるような特殊性を持ちながら、物語の外から見ている自分、つまり著者の強い統制力も感じるため、不安にはならない。でもこの世界は完全に多和田さんにしかお書きになれないだろう。2019/07/10
はちめ
9
『雲をつかむ話』は私小説風ミステリー。比較的読みやすい作品。いくつかの文学賞を取っているのもうなずける。☆☆☆☆☆ 一方、『ボルドーの義兄』は言葉から発祥した印象の積み重ねのような作品。反転させた漢字が章立てのようになっているが、変化が激しく続けて読むのが辛い。☆☆☆★2021/05/05
erierif
9
『雲をつかむ話』は再読。前に読んだ時は独特の実験的な書き方に戸惑いつつ読んだけど今回はより読めた気がする。訪ねて家に入れた男に前科があったというエピソードはよく覚えていた。多和田葉子は難しいようでいて感覚に訴えるような記憶の深いところ無意識に入り込むような不思議なところがあって好き。雲とは何か?罪、刑罰、犯罪者、白黒をつけるのではなく罪と罪がないという境界について自然と考える話が多かった。『ボルドーの義兄』ドイツの港に入ってきた韓国船の漢字「現代」という会社名を日本語の「げんだい」と変換し(続く2019/07/06
Yukiko
8
雲をつかむ話は、ストーリーや情景、人との関係を愉しみながら読んだ。 この方は私と同じ歳で、この時代にこんなことをしていたのか、という読み方もできる。 ボルドーの義兄は、途中から迷子になってしまった。 あるところで、Bordeaux 水辺 (bord d’eau ) の町の言葉遊びかと気がついたら、言葉遊びを楽しめるようになって面白くなった。 2025/02/01
ひでお
7
和多田さんの作品は、記憶と妄想とがないまぜになった、不思議な読後感です。ヨーロッパとアジア、女性と男性、家の中と外、右と左というような2面を反転して見せる表現が印象に残りました。「ボルドーの義兄」は主人公がどんどん過去や記憶や想像をたどりながら時を行ったり来たりする感触がおもしろいと思いました。2020/05/29
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