内容説明
【もくじ】
第1章 法医学ができること
解剖するかしないかは、どうやって決めるのか/解剖医が遺族にできること ほか
第2章 人は思いがけなく死に遭う
たった300ミリリットルの出血での死/呼吸が可能な状態での窒息死 ほか
第3章 解剖で判明した事件・事故の真相
わが子の命を奪った小さな傷の放置/自宅での不審死の真相 ほか
第4章 解剖台の遺体が語る現代日本の課題
家族の中の孤独/色とりどりのあざが物語る親からの虐待死 ほか
第5章 遺体が教えるそれぞれの人生
宝くじで借金を返そうとした男/浮く遺体、浮かない遺体 ほか
第6章 法医解剖医として考えていること
「この死に方は悪くない」と思えるとき/自分の死は最後までわからない ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
81
『死体格差』に続く著者の2冊目。前著と同様、遺体をめぐる法医解剖医の薀蓄がいっぱい載っている。全死亡者数のうち約15%を占める異状死体。法医学が対象にするのは警察の介入で裁判所が解剖の必要性を認めたもので、異状死体がすべて解剖されているわけではない。法医学の仕事は、「まず遺体を正確に記録すること」。たとえば、傷ができたときに生きていたことを示す「生活反応」、急死だったのか苦しみながら死んだのか、何が原因で死んだのか、遺体を解剖することによって多くのことがわかる。副題の「幸せな死に方」は他者が思うことであっ2019/07/27
オリーブ
22
解剖は事件性があるものばかりではなく病死と判断が分かれる時に必要性が出てきてそんな「異状死体」は全死亡者の15%、6~7人に一人の割合なんだそう。死体を扱いながらも生きている人の役にも立つのだと。思い込みをしないよう遺体を正確に記録し冷静に結果を警察に渡すことに徹しているとのことだが、時に犯罪に繋がる事件の背景(何かしらの依存症、社会復帰)にも思いを馳せる。未来永劫犯人を追い詰めるDNA鑑定技術の進歩。法医学が臨床で一番馴染みがあるのは精神科。「人間は最後まで生きることしかできない」との言葉が重く心に残る2019/06/28
バニラ風味
19
一人の人が亡くなった、という事実は変わらないけれど、死体を検分することで、その死因に新たな事実が見えてきます。解剖医が死体と向き合い、自分の経験をふまえて、死亡に至るまでの経緯を推測します。中には、本人も知らなかった病気が原因で亡くなった場合も。報われる、と言えるかどうかわからないけれど、真実がわかって、ホッとした遺族もいるでしょう。死ぬって、どういうことなのかを考えさせられました。2019/08/22
青木 蓮友
18
この西尾先生、とっても素敵です。読後こんな気持ちになるなんてさすがに思いもしませんでした、素晴らしかった。なんというか余白が見事なんですよ。上品、ひたすら美しい。凛とした気配、お茶室とかね、お香みたいな。文章を読んでこの余韻はちょっと無いです、しかもこの題材でですよ、いや、むしろ「だから」なのかな。いい、とってもいいです。また特に最後が、これで終わるんですもんねぇ、、悶絶ものです。詩ですねもはや、あ、俳句かも。日本人が疼きます。「自殺するのも生きることの一つ」この言葉に、わたし究極に癒やされました。2019/06/30
nob
16
「死因を決めるためだけに解剖をしているわけではありません。生きている人の為に解剖をしているのです」年に200体の死体を解体する現役の法医学者である筆者が最近の特徴的な約30体の死体を通して幸せな死に方とは何か考えるエッセイ。専門用語は所々に出てきたがその度に分かりやすい言葉で解説されていて非常に読みやすい。死人に口無しとはよく言うが、意外なことに、死体から分かることが非常に多い。特に印象に残ったのが、老老介護で妻と無理心中した夫の話。法医学を通して、人の「生」について考えさせられる、オススメの一冊。2019/05/22