ちくま学芸文庫<br> 増補 死者の救済史 ──供養と憑依の宗教学

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ちくま学芸文庫
増補 死者の救済史 ──供養と憑依の宗教学

  • 著者名:池上良正【著】
  • 価格 ¥1,155(本体¥1,050)
  • 筑摩書房(2019/04発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480098993

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内容説明

数々の未練を残してこの世を去った死者たち。その無念に、残された者は何をしてあげることができるのか。この問いに日本人は古くから執心し、多種多様な解決策を練り上げてきた。祟りと祀り、穢れと祓い、供養と調伏、そして死者との直接の交流である憑依。これらをさまざまな角度から再検討し、さらに比較宗教学的な見地を織り込むことで、生者と死者とが邂逅する局面と、そこで行われる交流や対決、取引に新たな光を当ててゆく。文庫化にあたり、靖国神社を集合性と個人性との相克の場として捉えた論考「靖国信仰の個人性」を増補した決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

59
日本人と死者との関係を論じた一冊。仏教以前より合った「祟り-祀り/穢れ-払い」というシステムと仏教によってもたらされた「供養/調伏」というシステムがその根本にあるというのが本書の骨子。範囲は平安以前から室町までであるが、その間死者への感覚がどのように変化したのか詳しく説かれて、例を読んでいるだけでも面白い。後半は憑依についてこちらは死者というより憑き物が中心に論じられていて、別のベクトルで興味深い事多し。特にシャーマニズムという言葉の再定義には目から鱗であった。宗教学、民俗学に興味がある人に薦めたいです。2019/12/11

テツ

14
本邦で練り上げられてきた死者に対するスタンスについて。亡くなった人間は祝福か祟りのどちらかを現世に遺す。個人が、社会が、その人間に後ろめたい想いを抱いていたのなら、彼は凄まじい祟り神になるだろう。そんなときにどうするのか。祀るのだ。彼の生前の活動に感謝して、強さを賢さを讃えて、敬意を示すのだ。ぼくたちが彼に対する罪悪感よりも強い崇敬の念を抱けた瞬間に、彼は祟り神からぼくたちを守護してくれる人間を超越した庇護者に変化する。死者の救済、誇りの回復はそれを行うこちら側の救済にもなる。よくできたシステムだよな。2023/06/13

佐倉

12
角川選書版は既読。加筆された『靖国信仰の個人性』は靖国神社の死者の弔い方を見ていく。歴史上、国家主義の啓発が目的として作られた神社だが、同時に“英霊”という言葉だけでは捉えきれない個別性もあることを記述していく。未婚の戦死者への供養として奉納される花嫁人形、戦死者を祀る永代神楽、遊就館に展示された大量の遺影など。本文でも少し触れられていた顕彰という形、かつ国家神道の神社なわけだが、個別の関わり方を見ると<供養>的な考え方で運用されている部分も少なからずあるらしい。2023/10/05

masoho

2
祟る霊を祭り上げる、から、死者を個人的に供養するに移行することで、日本人の「個」の確立を見る、というのが面白かった。怪談を好んで読むが、念仏で払われる霊、というイメージの成り立ちがどのように成されていったかも語られていて、非常に興味深い。面白すぎて、怪談の信憑性が落ちるからやめて欲しい(笑)2023/10/15

paxomnibus

1
論旨が明快で面白かった。死者は大別すると①安らかに眠る②浮かばれないに分けられ、平安の頃は②の祟りを恐れ調伏したり説教したりして追い返していたのが、やがて①へと変化させる方法が編み出された。それは現世の者の祈りが死者の功徳になるという概念で、そこから供養や回向などのまつりが盛んになってきたそうな。また同じ現象でも権力のある男性に起きれば示現や託宣とされるものが女性の場合は狐憑きだの神がかりだのと蔑まれると喝破。長年にわたる女性差別によって巫女の地位がどんどん下げられていったとも。冷静で客観的な分析が良い。2021/11/28

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