内容説明
享保五年(一七二〇)。十九歳の拓蔵は、亡き母に苦労をかけた父を殴るため、信州からはるばる江戸に出てきた。だが火消し“加賀鳶”の徹次に拾われて、父が江戸で“水神の辰”と慕われた伝説の火消しであったこと、そして昨年の火事で死んだことを知る。拓蔵は加賀鳶に入り、周囲とぶつかりながらも火消しの仕事にやりがいを見出していく。その頃、江戸の町ではつけ火が続いて──。まっすぐな若者の奮闘と成長を描く、痛快時代小説!文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
291
今村先生の『ぼろ鳶シリーズ』に目下ドはまり!江戸の火消の心意気の熱さは今の冬の寒さを吹き飛ばすほどの興奮。本作、同じ匂いがして購入!短気で喧嘩っ早く、我が信念のためには命さえ後回しという主人公。親への想い、意気への傾倒、そして悪へのひたすらな一本気❗潔くって真っ直ぐで一本ドシッと骨がある好漢。男のカッコ良さの本流を行きながらも微塵も下心のない漢。惚れられ方も半端ない!ぼろ鳶とは違った角度の火消好漢ストーリーで妙に鳥肌が燃える!分別の良し悪し、男の矜持、美しささえ漂う漢らしさに憧れのように酔いしれる‼️🙇2019/12/02
しんごろ
199
「火事と喧嘩は江戸の華」とはいうけれど、喧嘩ばかりだな(笑)今村翔吾さんのぼろ鳶シリーズと比較はしちゃいかん。全くの別物と思わないとね。これはこれで主人公の拓蔵の暴れっぷりが心地よく楽しく読めます。なんてたって書いてるのが土橋章宏さん。読みやすいことこの上ない。大岡忠相も登場 !愉快、痛快、爽快、そして粋を感じスカッとする作品!加賀鳶の水神の拓、新たなヒーローの誕生でした。2019/02/13
海猫
152
タイトルどおり火消しの話であるが、それにも増して喧嘩の要素が強い内容。十番勝負とあるけど作中、絶対十回以上喧嘩してるはず。しかしまあ主人公の気性がサッパリしていて一本気なので嫌な気分にはならない。喧嘩もするだけじゃなくて滅法強いのでそこは痛快。主役は性格上あんまり考えてないけれど、お話はわりと考えてある感じ。亡くなった父親の人間性が徐々に見えてきたり、背景に陰謀があったり。最後の殴り込みも拳で大人数と渡り合うのは、けっこう爽快。おかげでなんだか私自身が、喧嘩が強くなった気がしました。2019/01/01
ぶち
111
火消しとケンカというタイトルから歌舞伎の演目にもなっている"め組の喧嘩"のお話しかと思っていましたが、違っていました。め組も相撲力士も登場するのですが、本筋とは関係ありませんでした。主役は、信州から江戸に出てきた喧嘩っ早い若者です。この若者が加賀鳶に拾われて、そこで成長していく物語です。加賀鳶と聞くと今村翔吾さんの『ぼろ鳶シリーズ』を思い出しますが、それとはまた違った趣の軽快な語り口の物語です。周囲の人間に真正面からぶつかり、喧嘩していくことで大人の男へと成長していく姿が楽しい物語です。2021/08/13
きむこ
86
火消しといえば今はもう『ぼろ鳶』になっちゃってて、『加賀』と聞けば大音勘九郎だし・・完全に洗脳されちゃってるから最初は全てが違和感だらけだったけれど、徐々にこの物語のペースに慣れてきたらめちゃ面白いやないですか♡自分と母親を捨てた親父を殴りに江戸に出てきた拓蔵の物語。火消しに喧嘩はつきものだけれど、とにかく喧嘩っ早い!猪突猛進、ひたすら喧嘩してる(笑)テンポ良し人情ありで面白かった♬★4.52021/08/25