内容説明
父親と二人のローマ旅行は、予想外に楽しいものになった。その素晴らしい一週間が終わり、イースタ警察署に戻ったヴァランダーを待ち受けていたのは、花屋の家宅侵入の通報だった。店主は旅行中で盗まれたものはない。その次には一人暮らしの老人が失踪した疑いがあるとの訴え。一見事件性のなさそうな二件のできごと。だが、老人が濠の中で串刺しの死体となって発見されるに至り、事態は恐るべき様相を見せはじめる……。ヴァランダーを、そしてイースタ署の面々の心胆を寒からしめた奇怪な事件。CWAゴールドダガー受賞作シリーズ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
372
シリーズの第6作目。いきなりここから読む読者はいないだろうが、もしいたとすれば、スロースターターぶりには辟易するかも。上巻では2つの猟奇殺人が起き、それらがなんとなく繋がりがありそうに見えながらも、事件解決にはこれといった進展も見られないまま。父親のことや娘リンダのことなど、継続して読んでいるファン以外には夾雑物にしか見えないだろう。また、基本的には警察小説なのだが、犯人の姿が読者には開示されるというのも良し悪しかと思われる。多くの謎を秘めたまま下巻に向かうのだが、下巻次第ではこのシリーズもこれまでか。 2022/05/29
紅はこべ
139
もう20年以上前の話なんだね。最初のシーンでテロリストものかと思ったが、正統派の警察小説。久し振りのヴァランダーものだが、こんなに読み易かったっけ?北欧の警察ものは、どうしても主人公の刑事の家族関係が色濃く絡む印象がある。『本の雑誌』で読書スランプの特集を読んだばかりだけど、本作でスランプ解消されそう。一気に下巻に。ヴァランダーが思っていたより若かったんで、ちょっとショック。その年で老眼か。私はまだ大丈夫、と思いたい。上下とも被害者の周囲をカバー写真にしてるのね。2017/02/23
ケイ
129
乗ったら割れる細工をした渡しの橋から落ちて串刺しになったバードウォッチングが好きな男。蘭の魅力に取り憑かれた花屋は、縄で縛られ放って置かれ、正気を保つために縄を噛み続ける。父とイタリアで一週間過ごしたヴァランダーは、事件の関連性を見つけようとする。このたびマンケルが提示する国際問題は傭兵たち。国際紛争という名の下に、雇われて人殺しをする男達のもつ心の闇。2018/07/17
巨峰
93
猟奇的な殺人事件と老店主失踪事件に繋がりがあるのか。事件に挑むクルト・ヴァランダー警部に父の突然の死という哀しみが襲う。追い込まれていく警察が痛々しい。とにかくこのシリーズは作を重ねるごとに面白くなっていく。続きは下で。2018/12/22
セウテス
87
【ヴァランダー警部】シリーズ第6弾、上巻。串刺しで殺害された老人、長く監禁された後木にぐるぐる巻きにされて絞殺された花屋と、猟奇的な殺人事件が続く。老人の金庫からは、傭兵と思われる人物の日記が発見される。また花屋は、隠れて素行調査の探偵業をしていたと思われた。事件と何らかの繋がりが在るのだろうか、情報は入ってくるものの犯人にたどり着きそうな気配はない。シリーズの特徴の犯人側の描写が定期的に挿入され、幾つかの推理は出来てしまい進行と重ならずもどかしい。その為、警察の推理の遅さや捜査の方向性に少々苛ついてる。2022/06/07