内容説明
中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り…。瑞々しい筆致で描かれる青春群像劇。第29回小説すばる新人賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅら
330
宇宙や星の話を背景に夢や目標についてがテーマ。寂寥感があり雰囲気は好きだが夢の話は少々まどろっこしい。自分の心の中には必ずあると思うが普通人に話すものでもなく機会も出来事もない。だから文章にするとうだうだぐちぐち言ってる感がある。でもそれを話し合える仲間がいるのはいい。一緒に目標に進んでたのに気づけば置いていかれた、とかいう寂しさってある。「「色々な可能性に折り合いをつけて、俺らは進んでいく必要があるんです。だからそうやって悩んで悩んでやっと辿り着いたのが今なら、俺はその今を信じてみてもいいと思います」」2021/03/06
優希
74
体が締め付けられるようでした。天体好きの4人は社会人となり、悩みを抱えていたのでしょう。その選択肢は様々ですが、諦めたことと諦めてないものがあるような気がします。馴染みの科学館の館長の訃報で再び集まる4人。そこには手を伸ばせば届きそうな星空が見えました。でも、いくら伸ばしても無理なのです。夢や希望は届きそうで届かないところにあるのですね。2020/08/07
るぴん
69
小説すばる新人賞受賞作。宇宙が大好きな幼馴染の高校生4人組。一方は夢にしがみつき、一方は夢を諦める。再び全員が揃ったのは、お世話になった科学館の館長の死。科学館の閉館、館長の遺した未練。4人は己を見つめ直す。作者さんが16歳の時に書いた物だというのが信じられない!現役高校生の時に、既に懐かしい思い出としての高校時代を描いてる感覚が凄い。面白かったけれど、祐人が夢を諦めたことは逃げなのか?という部分だけ引っかかった。自分の限界を知り、現実と折り合いをつけただけのような気がするのは、私も大人だからだろうか。2019/03/08
えりこんぐ
48
青羽悠さん初読み。先に読了した娘が「後半、すごく刺さった!」と絶賛していたけど...ごめんなさい、母はそれほど?でした。心が曇ってんのか、期待値が高過ぎたのか。これを16歳で書いたのはすごいと思うので、他の作品も読んでみるつもり。【積読80】2022/10/12
里愛乍
47
作品そのものには関係ない―――といいたいところだけど、やはり本作が16歳で書かれたというのには驚かされる。綺麗な言葉並びと軽快なテンポ、ちりばめられた伏線、また登場人物のひとりひとりが必要以上にキャラづくりされていないところも好感が持てる。「物思いは暇人の特権」とか「未来は存在しない。可能性でしかない」とかこういう科白をさらりと会話にそれとなく混ぜているあたり、それこそ若い作家さんの可能性を感じる。とても気持ちよく、清々しい気持ちになれた読書時間でした。2019/03/11
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