内容説明
「わたし、生霊がとばせるから…」という彼女と別れた男の部屋に突然、虫が多量発生した! 『部屋の虫』収録。
過去に結んでしまった縁が、時と場所を越えて牙をむく――不可思議な体験に内包された人の狂気と闇を炙り出す実話集!
姑のイジメに耐えてきたが決裂、離婚を前に決行した復讐とは「十年かけて」、嫌いな上司を呪いたいと生半可な祈祷をしたばかりに…「呪殺法」、寝て起きると口の中が塩辛い。そんなバイトの先輩の後ろに視えていたのは…「眠る場所」など28編の怪異と狂気。日常で感じる些細な違和感は、怪異なる縁が牙をむく前兆なのかもしれない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
163
著者の渋川紀秀さんはご陽気でなく完全に暗い陰気な道を極められるタイプの方ですが、堅実で生真面目な性格とお見受けしますので、全く変わらない安定した作風をずっと長く追いかけたいなと思いますよね。シンプルだけど恐ろしい如何にもありそうな恐怖譚。『夜の駅』忘年会で飲み過ぎた後藤さんはローカル線のA駅のベンチに座って電車を待つ内に便意に襲われる。午後十一時半を過ぎて他に誰もおらず彼は間違えてA駅止まりの電車に乗ってしまったのだ。トイレに行きたいがA駅のトイレには行きたくない。実は十日前に悲惨な出来事があったからだ。2021/01/17
HANA
56
実話怪談集。この人の話を読んでいて嬉しいのは、狂気系の話が収録されている事。昨今の実話怪談で主流を占めている奇妙な現象系も悪くはないんだけど、やはりどこか温いんだよね。その点狂気系は詩情が無くて即物的というか、恐怖や嫌さがダイレクトに伝わってくるというか。故に狂気系ばかりだと胸やけがするけど、奇妙な話と同時収録する事によってそれが緩和され「嫌さ」だけが際立つような気がする。隙なのは「フェリーで起きた事」「ずっと見てるよ」。こういう都市伝説ギリギリの犯罪物は最近特に少ないので、読めて実に嬉しいのである。2019/04/25
hannahhannah
15
渋川紀秀のオカルト/サイコホラー。著者の過去の作品にもあった狂気系の話がぐっと増えて嬉しい限り。語り口のせいか、あまりエグさは感じなくて気味悪さを与える印象。ただし、「十年かけて」は酸鼻極まる話だった。「部屋の虫」のように心霊系と狂気系の境界が曖昧な話もある。「フェリーで起きたこと」はなかなか秀逸な出来栄え。竹書房の実話ホラーは心霊系の本ばかりで狂気系を収録した本は少ないので、渋川さんにはこの路線で突っ走って行ってもらいたい。2019/04/15
澤水月
15
人間の狂気、生き霊ものが好みでラスト1話には悶絶! 今月読んだ2冊双方に呪術師が出てくる偶然…表に書かれるような呪術師っているのか呪いが需要増えてるのか…2019/04/03
てつJapan
9
【〇】怖い人と怖い幽霊の話が半々くらい。ひねりのない淡々とした話が多いですが面白かったです。異形のものが見える「高台の電話ボックス」と兵庫県の山城跡を舞台にした「誤射」が印象に残った。2019/03/31