内容説明
激動の昭和で、常に権力の中枢にいた稀代の政治家・岸信介が目指したものとは?
これからの日本を語り合うための、歴史ドキュメント小説!
昭和8年(1933)。商工省・臨時産業合理局事務官の岸信介は、組織の枠を超えて活躍していた。
人当たりがよく、話もうまい。上司にも女にも気に入られる岸は、末は次官や大臣にもなるのではないか、と目されていた。
国家運営の根幹は経済であり、列強と対峙していくには武力ではなく経済力が必要だと説く岸は、関東軍が支配する満洲に乗り込み産業発展に邁進、日産コンツェルンの満洲移転という奇手の実現を図る。
が、戦争は泥沼化してゆき――。
きな臭い時代にこそ、文官の役割は重大だ。
マルス(武の神)ではなく、ミネルヴァ(文の神)こそが先頭に立たねばならない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サケ太
23
濃い。なんて濃い物語なんだ。“昭和の妖怪”とあだ名された岸信介を軸にして戦前、戦中、戦後を描いていく。当時、日本の政治を主導していた人間たちの苦闘。戦争へと転がり込んだ理由。昭和の人物たちが続々と出てくるが、それぞれが個性的で面白い。「マルスではなく、ミネルヴァこそが先頭に立たねばならんのだよ」という信条を抱いて突き進む岸。清廉潔白な人間ではない。しかし、そこにこの男の覚悟とあり方を感じる。先の見えない巣鴨プリズンに送られた彼の行く末が気になる。2019/10/29
雅
22
伝記モノは苦手だけど好きな作家なので読んでみた。単に史実を並べるのでは無く、解説が書かれているので状況を掴みやすい。人物像もなかなか魅力的で下巻も楽しみです2019/05/12
ホン
6
岸信介を描いた昭和史であり これまでも近衛文麿、広田弘毅などのそれも読んでるが やはり「ニイタカヤマノボレ1208」に至る開戦決意に最も関心がいく。東条英機については作家により評価にバラツキがあるようだ。この作品もハル・ノートの存在が大きなインパクトになっている。岸信介については細かなところまで詳しく書かれておりその時の背景も踏まえ かなりリアルに伝わってくる。岸については下巻を読んで書こう。2019/07/09
友川サイコー
5
「平成最後の」読了本。下巻は明日以降。岸信介を主人公として戦前戦後の日本を描く大作!英才との誉れ高き学生時代、自分の作品と豪語する満州時代。下巻は巣鴨プリズン前後から始まる!楽しみだな!しかし、孫が稀代の愚才でありながら、首相に上り詰めこの国を壊滅させることに腐心するとは、さすがの「昭和の妖怪」でも予想出来なかっただろう。2019/04/30
ken ken
2
昭和の妖怪といわれた岸信介の視点から見た昭和史。まるで松岡洋右や東条英機、近衛文麿そこにいるかのような文章描写。面白かったし下巻が楽しみです。2019/10/01