内容説明
スマホやSNSなど身近なものから,ビッグデータ,ポストトゥルースなど最新のテーマまで,私たちをとりまく「メディア」と社会との関係を一から学べる入門テキスト。「流動化」「個人化」「再帰化」という3つのキーワードで「メディア社会」をよみとく。
目次
第1章 メディア社会論のために(辻泉)
第1部 メディアの来歴:流動化
第2章 ネットワーク化の来歴──メディアがつないできたもの(溝尻真也)
第3章 モバイル・デバイスの来歴──場所感覚の喪失と創出(木島由晶)
第4章 コンテンツ・メディアの来歴──ソリッドなスター/リキッドなアイドル(永井純一)
第2部 メディアの功罪:個人化
第5章 ソーシャル・メディアの功罪──SNS的つながりの実相(團康晃)
第6章 デジタル・コンテンツの功罪──データ化した音楽作品とその価値(南田勝也)
第7章 ネット広告の功罪──監視社会と消費行動への自由(加島卓)
第8章 ユビキタス/ビッグデータの功罪──「わたし」という閉域,「みんな」の可視化(土橋臣吾)
第3部 メディア社会の構想:再帰化
第9章 変わりゆくリアリティ──二項対立から多項対立の時代へ(辻泉)
第10章 変わりゆくコンテンツ──鑑賞からプレイへ(南田勝也)
第11章 変わりゆくテクノロジー──分断された「わたし」からモバイルな社会性へ(土橋臣吾)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
24
ユーチューバーとしての社会的自覚を促したいので、襟を正す意味から借り出す。裏表紙にあるのように、現代社会は流動化、個人化、再帰化をカギにメディア社会を斬る。マクルーハンの『メディア論』で、メディアはメッセージであるというテーゼがあるという(3頁)。ベック『危険社会』で、予測可能な危機と、予測困難なリスクを区別した(10頁)。私がユーチューバーになることは、つい最近まで、予測困難なリスクだった。今もリスクかと思う。ギデンズ『再帰的近代化』の定義は、自己反省的に営まざるをえない現代社会をそう称した(12頁)。2021/05/19
Narr
10
有斐閣読みたくなったので超流し読み。物質との関係が希薄(というよりスマホなど一部メディアに集約)化されているのも結局どう評価すればいいか未消化。急速に変化するメディアを研究する著者さんたちの苦労は文章からひしひしと伝わってきた。リスク論や動的平衡論あたりは観光社会学ともつながる。2021/12/06
ぷほは
4
もっと早く読んでおけばよかった。流動化、個人化、再帰化という社会学の理論的キーワードによってメディアの歴史、現在、未来を俯瞰する。『デジタルメディアの社会学』からの連続性を感じさせるが、より教科書的に俯瞰的かつ網羅的に議論をマッピングしており、教科書として質が高い。具体的な情報は2013~4年ごろが集中的に扱われており、今との差異がないわけではないが、理論の射程がまったく失われてない。未来の各章はやはりどうしても想像力の更新が必要になってはくるものの、ではそこを皆で議論してみよう、と授業で言いやすくなる。2022/03/08
佐々木大悟
3
メディアというと様々な意味を含有する、ともすれば曖昧な言葉であるが、そのそれぞれを紙幅が許す限り網羅してワタシ達の生活や社会との関りと変化について、様々な論者による考察をまとめた一冊。2018年秋の刊ということで、かなり最近の状況まで記されているが、メディアと個人と社会の関係が激動の真っ只中にあるのが現代だというのが、どの章から読んでも伝わってくる。それらは互いに影響し合うもので、特に今は個人が発信者となり得る時代、一人一人の意識次第で社会を変化させられるのかもしれない。2019/01/31