内容説明
『大学』『論語』『中庸』と並んで儒教の「四書」とされる『孟子』は、仁・義・礼・智の徳に基づく王道政治を唱え、「性善説」に基づいた道徳論を説く。緊張に満ち、爽快感に溢れる文体はオーソドックスな古文のお手本となっている。中国哲学・国語教育に生涯を捧げた宇野精一による格調高い現代語訳が、孟子の教えの精髄を余すところなく現代の読者に伝える。儒教の必読書。(原本:『全釈漢文大系2 孟子』集英社、1973年)
感想・レビュー
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かわうそ
44
『「敢て問ふ、何をか浩然の気と謂う」と。曰く、「言ひ難きなり。其の気為るや、至大至剛以て直、養うて害すること無ければ、則ち天地の間に塞がる。』P90 養うということはこの浩然の気は内から溢れ出てくるものなのです。吉田松陰は天の命じることに従うこと、つまり道に沿うことでこの気を養うことができるとしさらに、『故に人能く私心を除く時は、至大にして天地と同一体になるなり。』(講孟箚記(上) P126)といいます。つまり、私心を完全に捨て去ることが大切だということです。浩然の気は決して外から来るものではないのですね2023/03/12
かわうそ
43
『つまり、仁義礼智の徳は、めっきのように外から我が心を飾りたてるものではなく、自分が元来心に有するものなのである。』P350、351 決して私心を仁義礼智の徳が覆っているわけではない。むしろ、私心が徳を囲っているのです。中心にあるのは仁義礼智の徳、惻隠の心なのです。孟子は告子に反論した際に、人が善であるのは水が下に流れることと同様に当たり前のことであるといい、井戸に子どもが落ちたら誰でも子どもを助けようとするということそれ自体が人を忍ぶ心、つまり人間に惻隠の心があることを証明しているのだと言い切っています2022/12/15
ミッキー・ダック
26
孔子と共に儒教の最重要人物である孟子の言行をまとめたもの。「論語」の次に読んだが、為政者が民を思いやる仁徳を身に着け、民がそれを慕うような平和な国家を目指せと説くのは全く同じ。だが論語では孔子自らの経験から得た道徳的教訓が多いのに対し、孟子は政治のあり方を儒学の経典や歴史的事実から説くことが多かった。◆一番大きな違いは天命論。孔子にとっては畏怖すべき信仰の対象であった天を、孟子は「天下万事の根本」として捉え対象化した。この「天の道理」が後々、絶対的な原理となって政治権力の正当化に繋がった。 2020/01/22
いとう・しんご
12
古典中の古典なのに初読、いい年こいてお恥ずかしい。訓読文の漢字すべてにルビが振ってあって漢文を読む楽しみを味わえるけど、途中で飽きて訳文のみを読んでしまったのでした。もちろん、古典だから心に沁みる言葉が一杯。これもまた座右において時として読み返してはシミジミる本ですね。2025/05/21
吟遊
10
良い本です。孟子が文庫でまとめて読めます。原文・読み下し文、現代語訳、そろっています。ただ、現代語訳が説明調で、付け加えていることも多いため、原文の文学的な味わいはあまりありません。この訳は、読む助けにはなるけれど、精密ではない。もともと、古い本の復刻文庫化なので、新注訳があれば、と願う。2019/11/27