内容説明
曖昧さを受け入れる、しなやかな思考――。
「ひとりであること、痛いほどの孤独は、表現者にとっての基礎なのだと甘受している」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
69
現在、国立新美術館でイケムラレイコの「土と星」の個展が開催されている。イケムラはスペインのセビリア美術大学で絵を学び、チューリッヒ、ニュルンベルクを経てベルリンとケルンを拠点に活動している美術家だ。本書は絵に向かう彼女自身の心の風景をも描いた半自叙伝エッセイである。伊勢の海のそばで育ち、視覚的な境界は水平線だというイケムラ。境界線はぼやけ、区切りがはずれてゆくような体験、目の前の水平線を超えたいという感覚がよく絵に現れてくる。「私は曖昧さこそ、可能性をはらんでいるのだと思う。曖昧なことは決して悪いことでは2019/03/15
ネギっ子gen
57
【現実を忘れて夢中になれる、そういう時間が必要だった】 ドイツ在住の著名な美術家。生い立ちや作品誕生の秘密に迫った、初の自伝的回想と作品紹介(口絵8点と本文内17点)。最終頁掲載の「うさぎ観音」は、滋賀県立陶芸の森の庭にある。著者は、「うさぎ観音の分身をつくって世界中に平和の祈りを捧げたい」と。<幼くして、人間の悲しみを知ってしまっていたように思う。/私は家の中に居場所がないと感じていた。目の目に広がる海との対話や、自然の中に入り込み小さな生き物を観察することが、私にとっても居場所であり、癒しだった>。⇒2023/03/20
けんとまん1007
49
淡々と綴られているようでありながら、決して、柔ではないものを感じ取れる。暮らす場の変化を愛おしむ心を感じる。どこにも属さない・・・この意味を考える。それぞれの場を受けれながら、やはり、生まれ育ったところへの思い。わかるような気がする。2022/06/21
くさてる
13
タイトルに惹かれて手に取りました。著者のことは何も知らなかったのですが、70年代に大学生ということは、いま60代かな?日本で生まれ育った少女が成長と共に海外を目指し、異国の地で美術と向き合う過程が記されています。伝記のような内容ではなく、著者の折々の心情が硬質な文章でつづられています。甘さのない、かといって無味乾燥でもない言葉が良かったです。作品も何作か掲載。2019/05/05
煎茶
2
長田弘さんの詩を読んでいるような気分になる、実直率直な気持ちのいい本。本棚に置きたい。2024/05/14