内容説明
一六世紀に日本を訪れたヨーロッパ人は茶の湯の文化に深い憧憬を抱いた。茶に魅せられ茶を求めることから、ヨーロッパの近代史は始まる。なかでもイギリスは独特の紅茶文化を創りあげ、茶と綿布を促進剤として伸長した資本主義は、やがて東洋の門戸を叩く。突如世界市場に放り出された日本の輸出品「茶」は、商品としてはもはや敗勢明らかだった。読者がいま手に茶碗をお持ちなら、その中身は世界史を動かしたのである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おせきはん
26
上流階級の飲み物だった茶が大衆化したときに鎖国していた日本と、英国に大量の茶を供給した中国、そして後に中国に代わり紅茶の産地となったインドがそれぞれ辿った異なる道に、歴史の恐ろしさを痛感しました。また、明治時代に、文化を前面に出しながら茶の輸出促進を図った日本がインドの紅茶との競争に敗れた件は、海外市場開拓のケーススタディとしても参考になりました。とても興味深い内容でしたが、一服を楽しむというよりは、苦みのある茶の物語でした。2020/03/05
崩紫サロメ
25
本書や川北稔『砂糖の世界史』、西洋史を学び始めた頃、こういう描き方があるのかと感心した。ウィリアムズやウォーラーステインの論を取り入れた資本主義・帝国論。茶が「文化」から「商品」になっていき、それがイギリスの東洋への攻撃的進出につながっていく、という理論をわかりやすく伝えている。著者の生前はイギリス史の研究会でお会いすることが多く、「イギリス帝国史/生活史の本」として読みがちであったが、読み直してみると、日本の話が結構多くてまた面白い。商品となった茶を再び文化として描き直す。名著。2020/09/11
クラムボン
20
タイトルは「茶の世界史」だが「イギリスが如何にして紅茶文化を創り上げたか!」と言う《黒歴史》…英国人が闇に葬りたい過去が語られる。後半は明治以降の日本に触れる。有力な商品として緑茶を海外に輸出する戦いは、英国紅茶文化の牙城を崩せず敗退する。歴史的にはイギリスの旺盛な紅茶需要が、中国からの輸入超過、それがアヘンの輸出へ繋がる。代わりの茶の生産地として植民地インドやセイロンを大開拓。そして紅茶に欠かせない砂糖の産地が西インド諸島。そこでは西アフリカからの奴隷が労働する…やはり《茶》は世界を動かしたと言えそう。2023/04/02
こぽぞう☆
17
図書館本。新刊の棚より。新刊だけど、新装版なので内容は古い。前半はヨーロッパと茶文化との出会い、後半は日本茶が明治維新以降、海外でどう戦ったか。ヨーロッパ文明以外の場所での茶の世界史を期待していたので期待はずれ。2018/02/11
いくら丼
16
あまり途中でアウトプットせず、その場限りでちょっとずつ読んでしまったため、定着率が怪しい……ものの、さらっと見返しても、イギリスで茶が導入された直後の極端な賛否や、オランダでの茶会の影響力、コーヒーとの競合、インドでの栽培の始まった経緯と、面白い話が盛りだくさん! 後半は日本の茶業が中心ですが、あくまで世界の舞台での話であり、日本を軸にちゃんと世界を見ているので、"日本史じゃん!"という違和感はありませんでした(笑)また、茶の世界史としては枝葉部分ですが、個人的にはインドの綿産業の扱いが衝撃すぎた……。2022/09/02