内容説明
少女時代にハンセン病を発病した津田治子は、終生その苦しみの中に生きた。現代では特効薬が発見されてハンセン病は治る病気となったが、彼女がその恩恵に浴するには発見が遅きに過ぎたというほかはなかった。みずからの生命に精いっぱい執着し、聖書と短歌を支えに、痛ましくも強い生涯を終えた女流歌人を描く、感動の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
21
当時は不治とされた病に冒され、肉親からも疎まれ、病変で容貌も変わり、収容所のような療養所に幽閉された女性が、聖書と短歌との出会いを通じて、その精神に深みと勁さを増してゆく。タイトルの由来となった歌「現身にヨブの終りの倖はあらずともよししぬびてゆかな」の境地は、苦しみの極限にある者の逆説的な静けさ、もはや聖書をも超越して、安直な予定調和の幸福さえも拒否する勁さがある。「ただひとつ生きてなすべき希ひありて主よみこころのままと祈らず」でも、キリスト教の優等生的な従順をかなぐり捨てて、生への意志を強くにじませる。2025/04/20
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