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内容説明
「キャプテンは、」 耳の奥がきんとした。
「大地にお願いしたい」
背筋は伸びきったまま、制止した。息も止まった。周りがかすかにざわついた。
そのざわつきを押さえるように、「はい!」
威勢のよい声が、後ろからまっすぐ飛んできた。
「よし。大地、頼んだぞ」
「そうだ、周斗。キャプテンマーク、あとで大地にわたしといてくれ」
ずっとつけていたサッカーのキャプテンマークを、他のチームから移籍してきた大地に渡さなくてはいけなかった周斗。くやしくて、チームメイトからも孤立してしまう。自分がいやになっていた周斗が出会ったのは古ぼけた時代遅れの銭湯だった。あさのあつこ氏の推薦デビューの著者が描く、切なく温かい感動の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
future4227
61
中学入試頻出の本。主人公は中学生のサッカー少年、その名も周斗。クラブチームでキャプテンを務めているが、チームプレーを無視した俺様サッカーが災いし、キャプテンを降ろされてしまう。チームメイトとも険悪になり、挫折感に打ちひしがれている時に、ふと立ち寄ったレトロ感漂う銭湯。そこで知り合った人々に刺激を受けて、また立ち直っていく少年の成長物語。銭湯が結びつける人と人との心の通い合いは、スーパー銭湯ではなし得ない。登場人物に誰一人として嫌な奴がいないのがいい。ギスギスした心を癒やしてくれる下町情緒溢れる人情物語。2022/09/10
ぼっちゃん
43
【会社のTさんの名刺代わりの10冊の1冊】ずっとつけていたサッカーチームのキャプテンマークを、他のチームから移籍してきた者に渡さないといけなくなった少年の物語。キャプテンを外されたしこりで仲間とうまくいかなくなった主人公、またキャプテンマークを任された者も悩みを抱えており、それぞれの葛藤をうまく描いた作品だった。挿絵は見たことがあるなと思っていたら、あさのさつこさんの『バッテリー』と同じ人だった。2025/04/12
あやっぴ
30
サッカーチームのキャプテンの座を降ろされた周斗。自分の発したひと言でチームのメンバーと疎遠になってしまう。サッカーと少し離れ、帰宅途中で見つけた銭湯になけなしのお金で入る。家族でもなく友達でもなく、ピンチの時にこのような場所で出会う人たちの存在は大きい。特にちょっと騒がしいが面倒見のいい比呂。周斗はずいぶんと成長しましたね。とてもいい作品でした。装丁も素敵。そして無性に近くの銭湯に行きたくなりました。2020/10/17
雪丸 風人
14
主人公は小学校の頃からいつでもキャプテンを任されてきたサッカー少年。プライドの高い彼ですが、強豪チームから移ってきた新顔にいきなりその座を奪われ、かつてないスランプに陥ります。そんな彼にとってひとときの癒しの場所になったのは、意外にも昔ながらの街の銭湯でした。主人公が復活してからの見違えるような行動力に注目ですね。「脳は素直だから、言葉を敏感に受け取る」「ポジティブな言葉で考えたり言ったりする癖をつけると、必ず物事がポジティブに回りだすんだよ」という言葉が気に入りました。(対象年齢は12歳以上かな?)2020/09/18
柊子
13
私自身、大地君と状況がよく似ている。バスケ部だったが、中学は強豪校。ベンチにさえ入れない事も多かったし、先輩が怖くて、いつもビクビクしていた。高校は公式戦で一度も勝てない弱いチーム。経験を買われ、キャプテンになったが、初めてバスケが楽しいと思えた。チームの雰囲気が良く、仲間と共に自身も成長できたためだろう。主人公の少年より、友達の大地君に、やたら感情移入してしまった。青春っていいなと、70を目前にして改めて思う。2025/03/14