内容説明
30代後半の悠は、アルバイトをしながら空き時間に原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京で一人暮らしを続けるが、ぎりぎりの
生活を送る。そんな悠の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして、故郷の家族の変化。
「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」
過去と未来を見つめた、悠の変化と決断は。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
141
文庫にて四年ぶりの再読です。やはり震災関連の作品は読んでて、なかなかツラいですね。ここ数年ではコンディション的になかなか読めなかった作品かもしれません。胸にグッとくる作品を書いてくれるお気に入り作家の穂高さんですが、今作も期待を裏切らない作品であったコトは揺るぎません。震災で親しみのあった叔母を失い、本人自身も体調不良にある作家「悠」を中心に繰り広げられ、家族それぞれの目線で綴られています。やはり本作は震災に関わった方が読むとよりいっそうと感動できて、ココロにグッとくるんだと思います。ステキな一冊でした。2020/09/29
papako
76
311を前に。本当に9年経ったとはいえ、当事者の方々にとっては何も終わっていないのでしょうね。想像することしかできない心情です。母親の『あっぺとっぺ』切ない。悠子の離れているから感じる罪悪感と焦り。『あんがとねー』伝わっているといいですね。なんとも言えない読書でした。2020/03/10
ジュール リブレ
72
2011-3-11。東日本大震災。東京にいてもあれだけ揺れて、その後の日本は変わってしまった。8年後に出版されたこの本。近しい親族を亡くした3人の女性(母と2人の娘)それぞれの視点から紡がれる。茫然自失の日々から思いは揺れて、そして日々は流れる。短調の音楽を聴き続けたような流れの中からのラストの決断、私は好きでした。2020/07/08
ジュール リブレ
69
再読。冬の寒い朝、一気読み。震災から少しづつ時が経ち薄れていくものと、変わらないもの。感性は磨いておきたいと思う。そして、行動も。2020/12/05
カブ
53
仙台出身の小説家悠子は、東京で一人暮らし。まだまだアルバイトをしながらのギリギリの生活をしている。そんなおり、あの震災が日常を襲う。まだまだ記憶に新しい震災の状況と、当事者とそうでない者の災害の喪失感の違いにハッとした。無神経に色々なことを言ってしまってなかったか、やってしまってなかったかそんなことを反省させられた。2019/03/19