内容説明
享保19年夏、旗本・根来長時(ねごろながとき)の妻せつは、屋敷を突然訪れた町奉行、大岡越前守を出迎える。大岡は夫に『兼山(けんざん)秘策』を読んだかと問う。そこには二十余年前に勘定奉行・荻原重秀が幽閉されて死んだとあった。死の直前、せつは生家の庭で彼を見かけたのだった。殺めたのは、佐渡奉行に昇りつめた父なのか。真相を追い、せつは佐渡へ。重厚な構成で描く堂々の歴史ミステリー!『風聞き草墓標』改題。(解説・柚月裕子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
29
『月華の銀橋(高任和夫)』は荻原重秀の経済政策中心の物語だった。この作品は重秀死後20余年、息子の源八郎は佐渡奉行に就任した。元・重秀の部下だった佐渡奉行・萩原源左衛門の娘・せつ(元・源八郎の許嫁)が物語の中心になっている。「兼山秘策」に書かれている重秀の最期が、せつ自身の遠い記憶と重なるため(重秀を殺したのは自分の父かもしれない)と思い始め、あれこれ調べ始める。美しいヒロインが不安と恐怖に駆られて探偵役をするサスペンス。江戸から佐渡への旅の様子も楽しく読めて、『氷葬(諸田玲子)』を思い出した。2018/09/29
ボブ
3
犯人がちょっと、それ以外はロードノベル、時代ミステリとしてかなり面白いと思う。満足しました。2019/11/24
まる
3
相当に奇想天外な話だったが面白かった。奉行が女性にあのような真実追求と危険な旅をさせるとはとても思えないが、そこに❔を感じてしまうと全てがつまらなくなるのでそこはあえて追及しない。道筋の調べはしっかりしてあるようで、坂道の険しさとか、昇りきって開ける景色、道幅のこと等、共に旅をしているかのようでもあった。それにしても作家とは歴史の小さな穴から想像を膨らませよくもこんな話を仕立てあげると改めて感心させられた。2019/10/23
熱東風(あちこち)
2
中々面白かった。作者同様、私も数年前に村井淳志氏『勘定奉行荻原重秀の生涯』を読んで荻原重秀に興味があったので購読。/ただ、荻原重秀という人物に興味がなければ、本書を読むのは少し辛いかもしれない。加えて登場人物の相関関係などの複雑さが拍車をかける。私個人も多少混乱気味だったが、今までにあまり読んだことのないタイプの小説だったので楽しめた。/今なお荻原重秀の悪名が雪がれるまでには至っていないようだが、元文の改鋳にてその政策の正しさが認められたことを以て瞑すべきかもしれない。2020/09/02
おそば
2
初諸田さん作品。 ぐいぐい引き込まれてすぐに読み終わってしまった。あの時代に女性で、江戸から佐渡まで足で旅するのはとても過酷だっただろうな.. 夏に佐渡行く予定なので、行く前にもう一度ちら読みしたい。2019/02/09