内容説明
「今川仮名目録」を制定した氏親(うじちか)と関東を席巻した宗瑞(そうずい)(北条早雲)。甥と叔父という関係とそれぞれの立場を切り口に、戦国大名はいかなる社会的背景のもと生まれるのかを解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
26
今川氏親、大河ドラマで桶狭間で討ち死にした今川義元の父、その母親が伊勢宗瑞の弟、北条早雲で有名、氏親が幼い間、補佐して今川を維持、拡大、その後独立して戦国大名となった、しかも今川との関係は維持していった。姉と甥を助け補佐し、駿河だけでなく遠江も今川の領国にする。伊豆に城を得て、関東と闘い、相模を支配下にして、独立する。関東武士には過去に栄光のある北条に名を変え、子孫が秀吉に敗れるまで、関東での戦国大名となり、後世まで、語り継がれる存在になった。私がこどもの頃、北条早雲といえば、道三や信玄と同じ梟雄だった。2023/04/25
鯖
21
「新九郎、奔る」の2巻も出たので併せて読む。今川氏親と伊勢宗瑞という甥と叔父、今川の幼い当主とその後見であり、後の北条家の当主早雲となる二人を追った本。今川や北条の外交方針についても詳しく書かれ、わかりやすい。しかし宗瑞の姉であり、氏親の母である北川殿の存在がともかくでかいなあと思った。彼女の先例がなかったならば、寿桂尼の存在もあそこまで大きくはならなかっただろうなあ。マジで今川と北条のゴッドマザーですわ…。しかし伊勢宗瑞という名で本が出るようになったのだとしみじみ感慨深い。2019/04/17
金監禾重
12
幼いころからマンガや小説で大器晩成の人物と刷り込まれた超有名人物が、24歳も年齢が修正される説を知った時は、驚いたものだ。本書によれば、従来「北条早雲」の魅力とされた低い身分からの上昇、大器晩成といったドラマは否定され、小鹿範満との抗争や小田原城奪取等は資料不足として詳しくは語られない。しかし伊勢宗瑞の、京都の幕府の意思を背景にしながらも東海・関東に足場を固めていく姿や、思っていたより粘り強く戦い続けた足利茶々丸なども魅力的だ。2019/05/15
さとうしん
12
こちらは戦国大名としての今川氏の始祖氏親と、北条氏の始祖伊勢宗瑞との関係を軸に、一体であった両者がそれぞれ東西への進出を目指す別個の大名として分立していくまでを描く。伊勢宗瑞の動向や北条氏の成立を知るには、彼が後見した今川氏親と今川氏の動向と切り離しては考えられないというのには同意。今川氏親が元服、結婚、任官と人生の重要なステップのすべてにおいて時期が遅れたという点に興味を覚える。一応著者なりの解釈は示されているが、今後の研究に期待したい。2019/05/03
MUNEKAZ
8
今川氏親と伊勢宗瑞、甥と叔父、幼君と後見という二人の事績を並列して書いている一冊。これが結構おもしろい視点で、「最初の戦国大名・北条早雲」に囚われず「今川家臣・伊勢宗瑞」がどういう存在であったかがよくわかる。叔父と甥が二人三脚で頑張る様子は、個人的には毛利輝元・小早川隆景コンビも彷彿させてなかなか楽しい。また二人を結び付けた宗瑞の姉・北川殿の存在の大きさも印象的で、戦国時代における正妻の重みも感じさせるところ。2019/02/03