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内容説明
「死刑囚! いつもひとりでこの想念に耐え、それが消えないせいでいつも凍え、その重みにいつも打ちひしがれている!」刻々と迫るギロチン刑の時。独房での日々から断頭台に上がる直前まで、主人公は自らの胸の内を赤裸々に告白する。死刑制度廃止を訴え、若い情熱で書きあげたユゴー27歳の作品。主題の重み、技法の革新性、社会的影響の点で刮目すべき作品であり、ユゴーの代表作のひとつと見なされる画期的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
80
ビクトル・ユゴーが27歳の時に死刑制度廃止の強い思いを込めて書いた作品。死刑が確定してから処刑されるまでの死刑囚の心情が生々しく描かれている。死刑制度の廃止だけでなく、一度刑を受けたものが社会に戻ってからの厳しい現状、それは『レ・ミゼラブル』でも繰り返し描かれていたが、ユゴーが当時のフランスの犯罪者への刑罰とその更生について強い問題意識を持っていたということがよく分かる。わたしたちも、じっくり考えなくてはいけないこと。2019/03/14
molysk
61
死刑の宣告を受けてから、ギロチンにかけられるまで。死刑囚の手記の形式で綴られるのは、人間としての尊厳を奪われながらも、最期の瞬間まで人間として生き延びようとあがき続ける、一人の人間の心の叫びであった。かつては自由に仰ぎ見ながら、独房では目にすることができない太陽が、象徴的に描かれる。筆者のユゴーは、死刑廃止を本書の目的と告白する。現在および未来のすべての被告に向けられた、全般的かつ永続的な人権の擁護、そして流血への嫌悪。ユゴーは、現在に至るまで主張されてきた死刑廃止の原理を、本書で高らかに宣言したのだ。2023/01/22
えりか
59
死刑判決をくだされたの男の絶望や苦悶が手記形式で綴られる。男の処刑をお祭り騒ぎのように集まる見物客、男の命よりも煙草の有無を重要視し、あなたは陰気すぎると非難する執達吏、ただ仕事をこなしているとしか感じられない司祭、男の周りの人物は彼の苦悩には無関心。ユゴーは本書を通して罪人を処罰する司法の不備や非人間性を浮き彫りにし、死刑制度の廃止を訴えている。これを読んで、死刑は必要と思うか、廃止と思うかは読み手次第ではあるが、少なくとも死刑制度について考える機会にはなるのではないだろうか。私も改めて考えたいと思う。2018/12/24
ころこ
44
読んで気付くのは、一人称で書かれていることと、固有名が少ないことです。『1832年の序文』と『解説』によると、作者の死刑廃止論を表現したようです。本作では、実存的な内面を持った人物が死刑囚の中に普遍的にいるということを示そうとしたと読めます。ところが、固有名が消えたことで、むしろ他者の不在が際立っています。作中、死刑囚は死刑後に残る自分の家族の心配はしますが、彼の人生に積極的に関わってきたのはこの家族のみです。加害者は他者であることに気付く(加害者への配慮が無いという政治的主張ではなく)はずであり、裁判を2019/01/04
星落秋風五丈原
42
ユーゴーが死後パンテオンにすぐに埋葬されたことやよくも悪くも国民的作家であることが解説からわかる。死刑囚の心情を亡くなるまで描く。サンソン一族も登場。27歳でこれだけかけたらすごい。2024/02/20