内容説明
都会的な短編小説の名手としてだけでなく、多彩な貌を持つ作家がみずみずしい文章で綴った自伝的エッセイ集!
エスプリの効いた文章は自己を通した時代に対する批評となり、時にユーモアを交えて辛辣な毒も見え隠れする。
早稲田大学の文学部で学び、卒業後は給料を得て習作するのに適している国会図書館に勤務し、退職して物書きに転身、文学賞をえて作家になる――小説家になる典型と言ってよいほどのコースを歩んできた作家が「初めから狙ってたんでしょ」と聞かれると、ちがうのだと否定する。小説を書くことも注文を受けて初めて筆をとったのであり、若い頃から志していたわけではなく、小説家になる能力など、備わっていない、と思っていたと綴る。でも、83年の人生を振り返ってみると……志していなかったにもかかわらず、小説家になるための経験を思いもよらず積んでいたのではないか。その一場面一場面を綴っていくことによって、作家に「なってしまった」理由が浮かび上ってくる。軽妙なタッチゆえにくぐりぬけてきた時代への風刺も洒脱で、いかにも阿刀田さんらしい“自伝”が編まれた。創作秘話も満載で、デジタル化の波に翻弄されている文学、そして本への尽きせぬ思いも随所に。楽しく読んで腹にずしりとくる、そんな文学論にもなっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
172
阿刀田 高は、永年に渡って新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、日本経済新聞に連載された「私の履歴書」をメインとした自伝的エッセイでした。「私の履歴書」として書いたせいか、著者の老いのせいか解りませんが、キレがなく、ブラック・ユーモアが少ないのが残念です。2019/02/24
takaC
50
残念かな、目新しいエピソードがなかった。2019/01/24
takaC
45
こないだ読んだ時に感銘を受けたわけではないのだけどなぜか再読。2019/04/04
ゆーり
28
阿刀田高は中高校生の頃に夢中になって読んだ。話の端々に今でいうトリビア満載で、博識の人という印象があった。彼の半生を私はよく知らなかったが(国会図書館に勤務してたことだけは知ってた)湧き出る小説のアイデアの元はメモだそうで、話の核にならないものでも、ちょっとした会話などに使えるとか。生真面目な人らしく、緻密に話の筋を計算し、取材も綿密に。最近は死を意識することが多くなってきたと言う。AIは死ぬ事が出来ない。人間の営みは全て死を意識するからこそ中身を濃くしてきた、と。氏のこれからの作品を注目していきたい。2019/03/02
ちゃま坊
16
エッセイ集。昔ショートショートランドという雑誌を愛読していたころ、阿刀田氏はそこの常連作家だった。いつもの街の図書館で講演会があった。幸福の神様の話をされたのを覚えている。博識で話が面白くわかりやすいというのがこの作家さんの印象。そうだったシンプルなのがベストだった。2022/04/25