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内容説明
本書は、科学と非科学のはざま、言うならば「光」と「闇」の間にある、様々な「薄闇」に焦点を当てた本である。「科学的」なものと「非科学的」なものは、そんなに簡単に区別できて、一方を容赦なく「断罪」できるのか? 「科学的な正しさ」があれば、現実の問題はなんでも解決できるのか? 何が「真実」で「異端」なのか? 分子生物学者が科学の可能性と限界を見つめ、私たちが生きる意味をも捉えなおしたサイエンスエッセイ
目次
神託を担う科学
不確かな科学とともに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
breguet4194q
153
「科学は信じたり得るのか?」という命題に取り組んだ内容ですから、結論を出しずらいのは当然です。「真実」と「異端」の狭間で、想像以上にグレーゾーンの幅が広いことを自覚できました。著者はエッセーという立場で話を展開しているので、気楽と言えばそれまでですが、ノーベル賞を受賞した結論さえ、時の変遷と共に覆る事実を考えると、信じ過ぎる事も危険、またエビデンスが薄弱だからといって足蹴にするのも躊躇してしまいます。何を根拠に生きていくのか。自分自身を見つめ直すキッカケとなりました。2023/04/13
trazom
41
「科学と非科学」というタイトルに期待すると裏切られるが、軽妙な語り口の科学者のエッセイとして読むと、著者の人柄が感じられて、それなりに楽しい。法則に厳密に支配されている筈の「科学」に対して、それらに疑問をはさむ「茶々を入れるおっさん」の大切さはその通りだし、オットー・リリエンタールの逸話から「人は航空理論がわかったから飛んだのではない。飛びたいから飛んだんだ。科学が意思を追いかけた」というのも納得。ただ、生物系の科学と物理・数学系の科学の違い、科学と工学の違いなど、もう少し踏み込んでほしかった部分もある。2019/05/13
道楽モン
38
とても良質なエッセイ集。科学者からの警鐘という大上段に構えたものではなく、その語り口はとても穏やかであり、適度なユーモアが盛り込まれている。筆者の身辺や想い出を入口に、どこかヒステリックで過剰で独善で我儘に溢れた現在の人間一人ひとりに、優しく諭す様な文章はことさらに心に突き刺さる。コロナ騒動や震災という歴史的に大きな試練を生き延びる我々は、ここらで一息つき、本当に大切なことに心を向けるべきであり、対峙し思考と対話を重ねる意志が不可欠である。というメッセージを、さりげなく与えてくれる。まさに大人向けの一冊。2024/12/24
樋口佳之
30
タイトルから予想されるハードな内容では無く、科学と科学研究教育に関わる読みやすいエッセイでした。競争的資金獲得の淘汰圧と象牙を持たないゾウの増加現象の相似形話とか印象的でした。試験に出題されたのはどの部分なのかな。2019/03/24
姉勤
28
ワイドショーや報道番組、それらのカウンターなるネット番組の、夫々の「断定的」解説や批判。こと専門家、もしくはジャーナリストなるコメント群。あらかじめ決められた正解から外れること、もしくは逆らうことを不善、すすめて「惡」とみなすことに安心と快感を付随させる、「正解」の溢れた社会。本書はそれらに感じる違和感を言語化して、自分の中にフィードバックされたような感覚を覚える。今や科学が、かつての宗教的絶対性を担い、万事の決定の裏付けとされている。人間の社会とは、正解の恣意的な乱用が行われていると思わざるを得ない。2021/02/28