内容説明
古紙やペットボトルなどの分別収集のイメージが強いリサイクル。だが、回収された使用済み製品は国内で再使用・再生利用されるだけではない。中古車や鉄スクラップなどは今や日本の主力輸出品である。一方、国際的なリサイクルは急速に拡大し、各国による再生資源の獲得競争や、環境汚染を生む有害廃棄物の輸出など、多くの問題も起こっている。二十世紀末から急拡大している知られざる現状と、問題点を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
63
リサイクルというと、「地球に優しい」というイメージがわくかもしれない。しかし、日本から出たリサイクル品の行く末まで考えたことは今までほとんどなかった。この本に書かれている現状を見ると、リユース品として他国で活用されるものも多々あれど、結局は廃棄物になってしまったり、環境汚染を引き起こす物質もあるとのこと。ペットボトルに至っては中国が輸入規制を始めたため、日本でもゴミがだんだんとあふれてきている状況だということをテレビでも見た。やはり実情を知ったうえで、問題意識を持ち、具体的な模索をすることが大事だと思う。2018/05/31
rico
56
様々なものが、中古品やリサイクルを前提とした原材料として、地球規模で取引されている。その規模感への驚き。一方、受け入れていた途上国の産業が発達するにつれ、消費者の要求水準が高くなり、自国調達が可能となって、それらが行き場を失ったり、不適切な処理が汚染につながるケースも。さてどうするか。グローバルな資源循環システム構築が必要、と言うのは簡単だけど、再利用は手間もコストもかかる。本書は、貿易統計に基づく実態や適正処理のための規制等、問題を考える上での基本知識を押さえるため、教科書的に読むべきものかもしれない。2019/10/21
TATA
38
リサイクルといえば、日本人的には「もったいない」という言葉からいいイメージが想起されるのだけど、環境汚染を他国に押し込んだり、他国の産業自立を妨げたりと単純ではないのだなと知る。リサイクル技術も含めてグローバルにサプライチェーンを構築することが必要。データと筆者の長年に渡る取材情報も豊富、示唆に富む内容でした。2020/07/09
アナクマ
36
再生資源は、環境汚染源にもなる。国際リサイクルの方向性とは? 18年刊。◉月に10万冊の中古コミックが日本→プノンペン(小口を研磨)→日本へ。中古トラクターの半分はベトナムへ。中国は古紙・廃プラの輸入大国。日本は90年代前半にスクラップ鉄輸入国から輸出国へ転換。ただし貴金属スクはトップ輸入国。◉資源/廃棄物は狭く閉じた地球上を行き来し、繰り返し人体と触れあう。「再生資源の回収量も…貿易も増える」「適正にリサイクルされる施設への貿易量は増えるであろう」自由貿易万歳に対抗してセカンド・ベストの考え方。→2021/09/09
Francis
22
リサイクルという言葉は当たり前になっているが、国境を越えて中古品や廃棄物が地球規模で取引されている、という実態は知られていないのではないか。中古のコミック本が国内でなくカンボジアでクリーニングされて再び日本で流通したり、中古タイヤの輸入は良いのに更生タイヤの輸入は不可としている国があるなど、国際リサイクルの問題は奥が深い。中古製品は安価のため途上国では歓迎される一方で、有害廃棄物が途上国に押し付けられる実態もある。国際リサイクル問題を知るための第一歩となる本。2021/02/08