岩波新書<br> 幸福の増税論 - 財政はだれのために

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岩波新書
幸福の増税論 - 財政はだれのために

  • 著者名:井手英策
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2019/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004317470

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内容説明

なぜ日本では,「連帯の仕組み」であるはずの税がこれほどまでに嫌われるのか.すべての人たちの命とくらしが保障される温もりある社会を取り戻すために,あえて「増税」の必要性に切り込み,財政改革,社会改革の構想を大胆に提言する,著者渾身の一冊.税や財政のしくみを変えれば,これからの日本,社会は大きく変わる!

目次

目  次
   はじめに

 第一章 鳴り響く「一億総勤労社会」の号砲
   勤勉にはたらき、倹約にはげむ/就労に追いこまれる社会/救済を強いられた人びとの怒り/はたらかざるもの食うべからず/左派にも支持された勤労ということば/勤労国家の誕生/勤労国家からの脱却の失敗/貯蓄がなければ人間らしく生きていけない/世帯収入四〇〇万円未満が五割の社会/まずしくなった僕たち
 第二章 中の下の反乱──「置き去りにされた人たち」の怒り
    「再び成長を」という幻想/アベノミクスをどう評価するか/増えない設備投資/労働投入や生産性も限界/困っている人を救済する/価値を分かちあえない人間の群れ/まずしさを認めない日本社会/逆転する被害者と加害者/まじめに生きている人たちの思い/弱者がさらなる弱者をたたく/ 「置き去りにされた人たち」の怒り/ 「民意」としての弱者切り捨て
 第三章 再分配革命──「頼りあえる社会」へ
   既得権をどのようになくすのか/ 「押しさげデモクラシー」の時代/なぜ人間は「ともに生きる」のか/財政の誕生/保障の原理からかけはなれた財政/ベーシック・サービスの提唱/人間のあつかいをお金では区別しない/左派からの批判に答える/いわゆる格差是正はどうなるのか/ 「頼りあえる社会」の提唱/新自由主義の「批判」から「無効化」へ
 第四章 貯蓄ゼロでも不安ゼロの社会
    「ムダをなくす」では財政は再建できない/減税のために増税をする勤労国家/消費増税と租税抵抗/社会保障・税一体改革の失敗/税と貯蓄は同じコインの裏表/税をどれくらいあげるのか/負担の公平性/どの税をどのようにあげるのか/税をどのようにパッケージ化するか/ 「生の保障(life security)」へ──「尊厳ある生活保障」と「品位ある命の保障」/画期的だった全国市長会の「協働地域社会税」/分断社会を乗りこえるために
 第五章 財政の転換をさまたげるもの
   消費税は格差を大きくするのではないか?/税と給付をセットで考える/中小企業の負担が大きくなるのではないか?/内部留保をまず吐き出させるべきだ/消費税は景気を悪くするのではないか?/なぜ消費税はあるのか?/ムダを削れば財源が出るのではないか?/防衛費と公共事業費はどうか?/防衛費の削減と増税を対立させない/信頼できない政府に税をはらうのか?/財政再建を優先すべきではないか?/なぜ危機になると日本国債が買われるのか?/バラマキじゃいけないのか?/税か、国債かという不毛な対立をこえる/ベーシック・インカムとどこがちがうのか?/社会主義ではないのか?
 終章 選択不能社会を終わらせる
   僕たちが生きる「縮減の世紀」/生きるため、くらすために必然的にささえあう/福祉国家のふたつの極──スウェーデンとアメリカ/家族の原理をどのように作りかえるのか/必要と欲望/抑えられる顕示的消費、すすむシェアリング・エコノミー/神奈川県にひろがる行政と住民の協働/企業にとっての利益と住民ニーズ/社会主義というひとつのバリエーション/歴史の転換点におきつつあること/福祉多元主義のなにがいけなかったのか/ソーシャル・ワークという希望/可能性への闘争
   おわりに
   主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

46
【人新世11】今、日本で増税を主張するなんて誰が耳を貸すだろう。著者は、そういう租税抵抗が強くなってしまったことこそが日本の不幸だという。減税+歳出削減+規制緩和のセットで何が起こったか。それによって経済成長が達成されたか。歳出削減と民間活力により社会的弱者を切り捨てた(生活保護のカット)。何より大勢の人たちの民意が社会的弱者切り捨てを望んだ。将来の不安ばかりで、他人不信となっているからだ。加えて政治不信があっては増税なんて言えるわけがない、というわけだ。■本書の増税論は、「頼り合える社会」にするための↓2020/12/27

壱萬弐仟縁

42
はたらいてまずしくなるくらいであれば、どうして生活保護を利用しないのだろう。ここに勤労と倹約の美徳が重くのしかかっている可能性を見だせる(6-7頁)。もし、僕たちが「勤労国家」とはちがう財政モデル、社会モデルを打ちだせる可能性があったとすれば、それは経済が勢いをなくしはじめた1970年代だったのではないだろうか(21頁)と述懐。後悔先に立たず。貯蓄できなければ人間らしく生きていけない勤労国家。それなのに、貯蓄をするだけの収入が得られず、大勢の人びとが将来不安に備える余裕をうしなってしまった社会(27頁)。2019/03/23

みねたか@

30
勤労・倹約を美徳とし、他人の世話になるのは恥とする私たちの文化。生活保護利用者は要件該当者の2割しかいないという。将来不安が高まる中、自己責任概念が他者への攻撃性に高まるギスギスした社会。著者は共存・公正・連帯という大義を掲げ,増税によりベーシックサービスを無償化する再分配革命を説く。2017衆院選民進党の基礎政策を担った著者。結果は小池劇場に翻弄されたが、財政で社会を変えるという気概が清々しい。改革実現には、NPO・市民・地域企業など様々な繋がりの中で、共感と信頼の芽を育てていくことが必要と考えた。2019/08/03

那由田 忠

29
非常に刺激的。左翼的な大企業や金持ちからとればいい論を捨てて、ベーシックインカムでなくベーシック・サービスの導入を説く。日本は、左翼も賛同して「勤労」を国民の義務として掲げ、先進国では日本と韓国くらいの、勤労と自己責任を重んじる「勤労国家」になっている。北欧型福祉国家でなく、全員で痛みを分かちあう消費税を軸とし、富裕層課税を組みあわせると。経済成長が限界となる中で、公共の困難を乗りこえるための国家とその財政を活用し、国・企業・市民が協力し合って命とくらしを保障したいと。財政的数値を出せると説得力があるが。2019/04/23

おせきはん

21
働いても生活保護よりも低い水準の所得しか得られないこともある自助論の限界を踏まえ、ベーシック・サービスの導入を説いています。高齢化の進展に伴い、現在の社会保障の水準を維持するだけでも財政支出が大幅に増えることが見込まれる中で、増税について真剣に検討しなければならないという認識を新たにしました。2019/06/16

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