内容説明
作家である「私」の眼前に見え隠れする不可思議なあやかし「闇彦」。幼い記憶の奥底に残るお婆あの言葉、急逝した同級生の少女、海が見える山中の鄙びた温泉宿で語られる「まれびと」の物語、ギリシャの血をひく美貌の女優。人生の要所要所に現れる「闇彦」は、「私」に何を伝えようとしているのか……。短編小説の名手が創作の秘密を初めて明かし、物語の原点にまで迫る自伝的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mijas
46
著者の半生の「ストーリー」。自分の中にある「闇彦」がぼんやりとしたものから次第に輪郭を帯びていく。なぜ人はストーリーを求めるのだろう。人は死すもの。愛する人はストーリーの中に永遠に生き続ける。夕海子のストーリーがあとからあとから思い出される。煩悶の日々、芳香の記憶。ロマンチックで、切ない。最後、弓彦が枇榔島に行く場面は、創作なのか思い出の一齣なのかもう関係なく涙溢れてしまった。「私は、自分の毎日をフィクションの中に埋めている。」ギリシャ神話と日本神話が織り交ぜられ、美しい夢幻の如く語られる。好きな一冊。2015/10/15
takaC
45
やっぱり自叙伝なんですね。事実でも事実でなくても不思議なお話。2015/07/19
KAZOO
9
自叙伝的な小説でかなり面白く読めました。小説なのでやはり自分のことを書いているとしても脚色されているのだろうと思っています。私なんかは阿刀田さんがこの小説のような生涯を送ってきたのだと信じ込んでしまいそうになりました。2013/12/28
kazukitti
4
んー初阿刀田さんなんで、薄めの本でサクッと読んだはいいけど、今一ピンと来ずw なんか、こうね、内容は自伝的なものなんだろうけど、ソコはどうでもよくてショートショートの大家だからなのか、細かい部分の突き詰めはいいから大まかに察せよ的なね、全体にぼんやり感が漂ってたんよね。ビシッと最後まで決まってない。闇彦って何?って結局よくわからんしw 大体こんなものだと思うので、自分は今後こうありたいと思う的な作者の述懐みたいなのは掴めたから、それで善しという感じなのかしら。取り敢えず他のも読む方向で。2024/09/01
MIKETOM
4
著者の自伝的小説。確かに阿刀田のエッセイで語られる様々な出来事がこの中で語られている。闇彦とは何の謂いなのか、あまり詳しくは書かれてないけど、どうやら語り部(小説家やエッセイスト)たちを象徴する神様のようなものらしい(なのかな?)。この中で主人公(阿刀田)は生涯語り部宣言を行っているが、これはつまり阿刀田による生涯作家宣言だと思っていいと思う。これが書かれたのが2010年、阿刀田75歳。人生の晩年においてこう宣言するのは根っからの作家だからなのだろう。作家魂を感じさせる。最期まで書きまくって欲しいと思う。2018/03/11