内容説明
「生きてて、よかった」心が潤う感動の名作。
幼い頃に両親を亡くし、親戚に引き取られた青山伊津子。自分の居場所を必死で見つけて生きる伊津子だったが、行く先々で不幸な出来事に見舞われてしまう。一方、死んだ姉と常に比べられ母親に否定されつづける少女・小林美羽は、ひどいアトピー性皮膚炎のせいで学校でいじめられていた。たび重なる不幸に耐えきれなくなった二人は、それぞれの場所で自らの命を絶つことを思い立つ。交わってはいけないはずの二人の人生は、この世でもあの世でもない、〈ある場所〉で交差する。
一度は諦めた「生きる」ということ。不思議な場所との出会いを通じて、もう一度「生きる」ことにした二人の人生は……。
壮絶な人生を生きる人が、自らの人生を終えようとするとき、彼らに聞こえた天からのメッセージとは。心が潤う感動の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
186
この世でもあの世でもない「ここのような場所」それは誰にでもある訳じゃないのを私は知っている。けれどこの哀しい伊津子と傷ついた美羽には必要な場所だったのだね。二人の身の上が行ったり来たりして多少読み難さはあったものの、全ての事がちゃんと繋がっていて優しいファンタジーだった。生きてると本当に辛い事も沢山あるけれど、とまり木にちょっと心を休ませて『何か』に気付きたい。それは羽だったり、機関車や鮮やかなテント、遊園地や一輪のガーベラかもしれない。隣の人の何気ない一言だったりもする。2019/02/14
mariya926
80
図書館にあったので借りてきました。銀河鉄道の夜と主人公の女性を絡めたように物語が進んでいきます。初めての作家さんだし読みにくいかな?っと思いましたが、読み始めたらするすると読めました。大学時代から画家のプロになりますが、スランプで一気に落ち込む主人公。その主人公と幼い時から体が弱く学校にも通えなくなった美羽が出会って進んでいく物語。感想は難しいけど、読みやすかったのが良かったです。2024/04/13
ゆのん
69
出版社から頂いたプルーフにて読了。子供の時に両親を事故で亡くし不幸せな子供時代を送った画家。病弱で両親の不和や、母親からの虐待に近い扱いに悩む少女。居場所の無い二人が出会ったのはこの世でもあの世でもない間の空間だった。人は幸せになる為に辛くても生きて行かなければならないのか。生きる難しさを考えさせられる作品だった。小さくても楽しい事、嬉しい事を大切にしていきたい。322019/01/27
信兵衛
36
敢えて言うなら、新しい「銀河鉄道の夜」の物語をここに見出した、という思いもあります。2019/03/10
蒼
27
苦しい読書だった。絡み合った人の縁の中でもがいて傷ついて傷つけて、生きる意味を放棄してしまった35歳の伊津子と11歳の美羽。彼岸の遊園地を選択する事も可能だったけど、現実の世界に戻る事を決意したのはその地で二人が支え合って、その温もりがかけがえのないものと感じる事が出来たからか。少女美羽が父親と伊津子の全てを理解できるにはまだ時が必要かもしれないが、今はまだ父を好きな気持ちだけで十分なのだろう。そんな事を思ってしまうのはただの老婆心でしかないのかもしれないが。2023/02/19