内容説明
「いま、シラードを知っているアメリカ人はほとんどいない」――。
巨大な爆弾製造の可能性を予見し、「ナチスに対抗するために、アメリカでも原子力爆弾の研究が必要です」とアインシュタインに手紙を書かせた米国人研究者、レオ・シラード。彼は原爆投下の直前、トルーマン大統領宛に、無警告使用に反対する七〇名の科学者の署名を集めた。製造をたきつけておきながら、なぜ使用を止めようとしたのか。そんな人物がなぜ歴史から葬られているのか。署名はどうなったのか。
本書ではシラードの署名にサインした科学者をはじめ、彼を知る人物を中心に直接取材を実施。彼の名が消えた理由、そして、総費用二兆円、関わった労働者11万人余と言われるマンハッタン計画の本質。それはすなわち原爆とはなんであったかという問の答えでもあった。
※本書は2017年10月27日に配信を開始した単行本「届かなかった手紙 原爆開発「マンハッタン計画」科学者たちの叫び」をレーベル変更した作品です。(内容に変更はありませんのでご注意ください)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
105
広島、長崎に投下する原爆を製造開発したマンハッタン計画。総費用2兆円、関わったのは最盛期でひと月約12万人。開発の熱に浮かされるのは当然だろう。科学者なのだから。計画の発端を作り、科学者として深く開発に携わりながら、日本への投下を止めようと科学者の署名を集めトールマン大統領に書簡を送った、レオ・シラード。彼を形容する言葉にこんなものがある。「原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男」。彼を知るアメリカ人は、ほとんどいないという。大好きな『東京の台所』の著者大平さんが、原爆投下の真実を追う。2018/08/30
いちろく
50
紹介していただいた本。「原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男」と形容された、レオ・シラード。レオ・シラードへの調査を軸に、マンハッタン計画について、著者の取材を元に描かれたノンフィクション。取り扱っているテーマについて、この本だけで解ったとは、とても言えない。その為、描かれている事を、全て鵜呑みにするつもりはないし、否定するつもりもない。ただし、表に余り出ていない事実を知る事で、平和の大切さを改めて実感する事は出来る。そんな1冊と私は受け取った。2018/01/06
かもめ通信
17
#科学道100冊 オンライン読書会に参加すべく読んでみた本。“原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男”レオ・シラードを軸に、原爆投下の直前に「日本に警告せずに投下し、無差別に殺戮することに反対する」署名がどのような面々のどのような想いによって集められたのかを追ったノンフィクション。取材先で出会った人々とのやりとりを含め、原爆投下反対署名の実像に迫るという手法で書かれていて、どちらかといえば「科学」をテーマにしているというよりは、「ヒューマンドラマ」的な色合いが濃い。2020/03/27
ケニオミ
16
「原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男」と呼ばれるレオ・シラード。彼自身マンハッタン計画に参加していながら、原爆を使わせまいとして、計画に参加中の科学者からの署名を集める。しかし、当時の大統領トルーマンの手元に届いたのは、軍部からの抵抗のため、原爆投下後となってしまう。そんな彼の活動に触れた生き証人達のインタビューを通して、彼の志を広め、核使用を止めさせようとする意思および活動を報告する内容です。皆さんに読んで欲しい一冊です。2017/11/29
kiho
13
知らなかった事実…届けようとしたものの届かなかった現実…一歩の違いが歴史を変えた、ともいえる⭐レオ・シラード、この本で初めて知りました。2018/04/30