内容説明
中学教師の葉奈子は中二の夏、ネットの掲示板で声をかけてきた男のもとに身を寄せた。そこは、母親から構われずに育った葉奈子が救いを求めて逃げ込んだ場所だった。15年前の夏の記憶と、担任する女子生徒の無断外泊の背景が重なったとき、葉奈子の中でひとつの真実が立ち上がる。その真実を共有したのは、心に傷を負ったまま生きる同僚の中年男性教師だった――。SNSを用いた未成年者誘拐の、真の罪をあぶり出した長編小説。 解説・寺地はるな
感想・レビュー
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akiᵕ̈
25
女子中生がネットで知り合った男の元へという後を絶たないニュース。未成年誘拐ともなってしまうこの様な事件の"真の罪"とはを投げかける。受け持つクラスの、家柄も良く優秀な女子生徒が家を出て数日帰って来ないを発端に担任の葉奈子が向き合う。葉奈子自身同じ年の頃、ネットで知り合った男の元へ逃げ込んで過ごした過去があり、その当時の事が思い起こされる。同僚の男性教師・溝渕と、互いの過去に起きた事に向き合いながら自身を見つめ直していく心の機微や関係性がとても良い。幼い心の逃げ道となる良いとまり木が身近にある事を願う。2025/05/15