内容説明
【第42回すばる文学賞受賞作】――純子ちゃんもあるやろ、お父さんに有罪だしたこと。硝子職人の父はいつの間にか「箕島家」から取り除かれてしまった。工場(こうば)で汗を流して働く以外は縁側から動かず、家族を見なかった父はどこへ行ったのだろう。笑顔が増えた母、家には寄り付かない姉の鏡子と祐子。ときどき現れる「ミシマ」さんという男性。純子だけが母の視線を受けながらずっと家にいる。大好きなレーズン、日課の身長測定、ビーカーで飲む麦茶、変わらない毎日の中、あるときから純子は父の「コンセキ」を辿り始める。日本のどこかで営まれる家族の愉快でちょっと歪んだ物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
195
作者のほどこす小説的な仕掛けは、うまく機能していないようにおもえる。あるいはぼくはべつの雑誌の論評かなにかで、その仕掛けをあらかじめ知らされたうえで読んだものだから、そうかんじるのかもしれない。自然の描写は美しく、動きは的確で巧い。描かれる家族とは裏腹に、文章はおさまるべきところにおさまり、読んでいて心地いい。でもだからこそ、背後にひかえる作者の企みが透けてみえて、物語に入りこめない。この純粋な家族の日常を、そんなふうに勘ぐってしまうぼく自身こそが、わるもん、ということになるのかもしれない。2019/03/06
いつでも母さん
178
ある家族の話。主人公の三女・純子目線で展開する、ちょっと独特で芥川賞の香りがする?と思ったのは私だけだろうか。150頁に満たないのに実は深くて痛かったりもする。それは、かつての自分をどこかで思い浮かべたからかもしれない。『わるもん』ちょっと愛を感じる言葉だが、この作品は好みがわかれるかもなぁ・・2019/03/05
ででんでん
86
この作品はよく理解できず、字面を追っていくだけの読書になってしまいました。うーん、わかりませんでした。2019/04/15
なゆ
80
不思議な魅力のある作品だった。でもレビューが書きづらい。実はかなり読み進んでも、なんだかよくわからなくて困った。箕島家は両親と娘3人の家族。“わるもん”はガラス職人のお父さんのことだと初めにわかるが…あれ?お父さん何処行ったん?ミシマさんて誰?なんだか落ち着かない。すべてが純子の見たまま感じたままのことだけなのでとても不安定な印象。そして、状況が見えてくるとだんだん不安に。でも純子は純子としてのびのびと生きている、最後にはそういう安堵感で穏やかに本を閉じた。再読したら、また違う印象なのかもしれない。2019/08/04
fwhd8325
73
目の前にあることが、何をしているのかなかなか理解できないまま、ただ傍観者のように同じ場所に居続けているような感覚でした。決して嫌いな世界ではないのだけれど、なぜか、もう一歩進むことができないまま物語が進んでいます。時折、後ずさりさえさせながらも、物語は動いています。何だか置いて行かれてしまったような寂しさと不安が残ります。2019/07/23