内容説明
最期ののちはきみのそばで眠りにつきたい――。亡父が残した愛人への手紙。それは砂上の出会いから続く「運命」の結実だった。愛を失った夫。心を病む元婚約者。愛人の息子を名乗る男。35歳の主婦・美砂子は、自らを取り巻く人間関係の根源に、父の妄執と、千億の愛すら呑み込む「超越」をみる。生きるとは何か。人はなぜ、子を成すのか。果てなき愛への答えを示す、圧倒的長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
70
なんだろ、この違和感。出だしよかったがためにラストのがっかり感がたまらん。登場人物をどれだけ増やせば満足なの？ミステリーにしては、ラストはすべて後出しじゃんけんでまとめてみました、みたいな？生命のサイクルについては、ところどころいいこと言ってるんだけどねぇ。主人公の東大出の父上、この人がまた勝手な人なんだが、彼が愛人に送った恋文は秀逸でしたね。「あなたは僕の中にいつも生きている。さながら生命の実質のようだと感ずるのです。」いいなぁ、こんなセリフ、惚れた男に言われたい。2014/12/29
優希
57
愛人への手紙が運命を決めたのだと思います。自らを取り巻くことが全てを飲み込むのを感じたのですから。終わりのない愛を美しく描いていたように感じました。2021/07/02
ω
40
白石ワールドをミステリ仕立てしたらこうなるみたいな😹皆が愛にこだわり過ぎの登場人物10〜20人が入り乱れるッω💦2021/08/02
東京擬態~tokyoGitai
23
白石氏の作品は、複雑化されているが案外と単純だ。だが、その筆致は相変わらず圧倒的。そして、私が氏の作品に惹かれるのはストーリー展開よりテーマ・本質だと思う。本作品では女性性、男性性がくっきりと浮かび上がっている。女性の宿命と男性の自負。そこへ絡む個々人の感情。情の深さ、ではなく、それら個人個人の思惑、思想、愛憎、執念執着が絡み、それまで信じていたものが、相手との繋がりがいとも容易く綻んでしまう。他人を見つめ己を発見する。他人の過去を見つける度に己の現在を発見する。この作品を男性作家が書いたのが好ましい。2013/07/11
Yunemo
22
著者の人間模様の描き方にいつも圧倒されてしまう。「運命」とは何？。逃れられない「運命」、本当にそう？人間関係は総じて「弾み」、確かに。それぞれの人間模様が浮き彫りにされていく過程、ちょっと複雑すぎて深く戸惑う。人間の気持ちなんてこんなものなの。けっして軽いという意味ではなく、重いという意味でもなく、なんとなく表しがたい感情だけが残されてしまう。そんな作品かな、と自分に納得させて戸惑いのまま読了。2013/04/02
