内容説明
かつて実習留学生としてやってきた私の妻・小翠(シャオツイ)。表示されない海沿いの街の地図を片手に、私と彼女の旅が始まる。記憶と存在の不確かさを描き出す、第160回芥川賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
199
ことばが隙間から流れこみ、粘り気を帯びて纏わりつく。なめらかに変化していくことばが奇妙なずれを生んで、自分と世界を隔てる膜が、次第にぼやけて、あいまいになっていく。どこまでがぼくで、どこからがそうではないのか。それはかつて居た場所の、よく知る街でも地図を描こうとするとうまく描けない、そんなあいまいさと似ている。いや、何かちがうな。あたまに浮かぶことばは液体のようにそばから溢れ落ちて、感想を書こうにもうまく表現できないのだ。まるでタヌキに、いやタッタに化かされたような、ちょっと奇妙で居心地のいいはなし。2019/02/19
starbro
187
第160回芥川賞受賞作・候補作シリーズ第五弾(5/6)です。高山 羽根子、初読です。今回の候補作の中で一番芥川賞っぽい作品でした。そうなると逆に受賞出来ないのかも知れません。オススメは表題作・芥川賞候補作の『居た場所』です。続いて、候補作ラスト「平成くん、さようなら」へ。2019/04/08
mariya926
105
図書館にあったので借りきましたが、感想が難しい本。海外から留学に来た実習生と結婚した主人公。かなりの部分で受動的です。その妻が以前自分が住んでいた場所に旅行したいという事で一緒に行きますが、表現が難しいです。どの国なの推理していましたが最後まで分からず。他の短編2つは更に難解でした。この作家さんの本がもう一冊あったので試してみようかな??2024/03/22
なゆ
96
ずっとぼわぼわとしていて、読み終わってもぼわぼわぼわぼわ。レビュー書けるのか?!はっきりとしたことが書かれていないので、探り探り読んでる感じ。妻である女性の、初めて一人暮らしした場所を一緒に訪れる。ちょっとぎこちない会話。地図上ではぼやかされたその場所での不思議な体験と、彼女の子どもの頃の体験。タッタという生き物。「この人たちはどこから来たんだろうね」わかりそうでわからない、ぼやかされた読み心地。併録の『蝦蟇雨』の方が好き。短いけど研ぎ澄まされた文章。冒頭の蝦蟇を下処理するエグい場面が美しく思えるほどに。2020/11/07
かみぶくろ
92
留学先の日本で日本人と結婚した中国人らしき女性が、昔住んでいた場所を夫と訪ねるお話。どこにでもある光景の中にところどころ現実を異化する不思議な現象が現れて、良くも悪くも読み手を困惑させる。特にタッタという不思議な動物がそこかしこに現れるのだが、結局何を表現したいのかよく分からない。それでいて読後感はわりと良いという怪奇現象。もともとSFから出てきた作家だが、本作は芥川賞候補にもなっており、今後もジャンルに囚われない活躍を見せそう。2019/02/09
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