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内容説明
あのフェルメールの傑作はもう見られない? 1990年3月、米ボストンのプライベート美術館、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館からレンブラントの〈ガリラヤの海の嵐〉を含む10数点の美術品と共にフェルメールの〈合奏〉が盗まれた。以来、約30年、美術ファン、美術館関係者の期待も虚しく、〈合奏〉はその姿を現していない。著者は他のフェルメール作品〈手紙を書く女と召使い〉〈恋文〉〈ギターを弾く女〉が盗まれた事件の背景を分析し、IRA(アイルランド共和軍)の関与などの政治的な動機、保険金目的、富豪コレクターの指示……といった側面から推理。同時にFBIによる捜査の進捗からもアート界最大のミステリーを追う。加えて、パトロンの存在、カメラ的な技術の導入、現存するも最大37点といわれる作品数など画家フェルメールの謎にも言及。2000年刊『盗まれたフェルメール』を踏まえつつ、〈合奏〉にまつわる新事実を報告する決定版。
目次
はじめに
第一章 フェルメールとガードナー美術館盗難事件
第二章 美術品盗難の奇妙な世界
第三章 ガードナー美術館盗難事件の捜査、最初の二三年間
第四章 〈恋文〉と〈ギターを弾く女〉事件
第五章 〈手紙を書く女と召使い〉、最初の盗難事件
第六章 一七世紀、フェルメールのコレクターたち
第七章 〈手紙を書く女と召使い〉、二度目の盗難事件
第八章 今、〈合奏〉はどこに?
おわりに
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
134
2022/2/19 ジュンク堂三宮駅前店にて購入。 2023/10/16〜18 30点前後しかないフェルメール作品のうち、盗まれた「合奏」、「恋文」、「ギターを弾く女」、「手紙を書く女と召使い」に関する盗難の様子やその後がまとめられている。無事であることを祈るのみ。2023/10/18
佐島楓
78
絵画泥棒にもいろいろなバリエーションがあるようだ。政治的な目的の盗難は日本ではそうそう起きないだろう。盗まれたことで絵が損傷し、修復した結果新たな事実がわかったという事例には、転んでもただでは起きないという言葉を思い出してしまった。フェルメール展を見に行きたくなったけれど、時間がない。確か完全予約制で鑑賞ができるとどこかで読んだが……。2018/10/14
アキ
39
2000年に出版された同じ著者の「盗まれたフェルメール」が絶版になり、そのあと未だに行方がわからない「合奏」について改めて調べて書いた本。2度も盗まれた「手紙を書く女と召使い」が今日本にある偶然。大阪でお目にかかるであろう「恋文」も盗難され戻って来た作品。今はもう見れない絵も、今会える絵も旅をして来て偶然会えるんですよね。そういう意味で会えるのは奇跡的。現代では有名な絵を盗難するアートナッビングは割に合わない、ALRのデータベースによって盗まれた絵を買いたがるバイアーはほとんどが囮捜査員!なので。2018/10/12
むっちゃん✿*:・゚
38
実のところフェルメールは真珠の耳飾りの少女しか知らない。ラピスラズリの青が鮮やかだなーくらい。それでもこれを読んでみた。原田マハ氏推薦!に釣られた(笑)結果面白かった。フェルメールだけでなく、絵画全般が今までの歴史で何度も盗まれてきたらしい。同じ絵が複数回盗難に遭うのも少なくない。動機はお金だけでなく、1番印象深いのは21歳の青年がフェルメールの絵を人質に自国政府に東パキスタン難民の救済を要求する。不謹慎だがちょっと格好良いとすら思った。→2018/10/25
ぐうぐう
31
1990年、ガードナー美術館から盗まれたフェルメールの「合奏」、その事件を中心にフェルメールの他作品の事件なども例にして、現在の絵画盗難事情を分析、紹介する『消えたフェルメール』。朽木ゆり子は『フェルメール全点踏破の旅』同様、絵画だけではなく、美術館という環境にも目を配り、作品がそこに辿り着くに至った経緯を丁寧に遡る。ゆえに絵画が人間のように感じられ、盗難が誘拐に思えてくるのだ。実際、盗難にあった美術品の売買が困難になった現在、犯人達の目的は美術品を人質にして、政治的主張を達成しようとする。(つづく)2019/05/16