内容説明
謎に満ちた女・菱野時江とは何者なのか――。突如、連絡が取れなくなった時江の消息を追う二人の友人、渋崎咲子と古河内栗美は、携帯端末のSNSを頼りに彼女の居場所を突きとめた。そこには「あの国は暮らすにはいいが、生きるのは窮屈すぎる」という一文が……。(「幻の淑女」より)文学界の異才・木下古栗が挑んだ、なんともトリッキーなエンタメ風小説! 作品の全貌は、読んでみてのお楽しみ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
83
風景画の綺麗さを、宗教画の蘊蓄を、人物画から想像する背景を語ることはできる。でも、とっておきの抽象画を語る言葉なんてないのだ。考えるな、感じろ!逸脱しろ、脇道に逸れろ!ついでに剃りマンジャロで股の間から顔を出して、女を誘え!牛乳寒天専門店が流行るわけないし、バラクは天職に転職し、生きのいいAVのタイトルを料理してお肌はすべすべ!意味不明?だから抽象画を黄色がキャンパスに叩きつけられて~って語っても意味ないって言ってるんだよ!型にはまるな!誰の指図も受けるな!ブレーキを叩き折れ!盗んだバイクで走り出せーー!2019/05/17
aquamarine
78
謎の女菱野時江とその周辺にいる人々で短編が展開されます。著者はまるで文献に記すように全裸でなければ見えない体のパーツを表現し、もちろん官能的ではありません。なぜそれをするときに全裸でなければならないか、そんなことを古栗作品では考えてはいけないのです。1編目「淑女のたしなみ」でガツンと取り込まれ、「創造的破壊」で迷子になり、「遠隔操作」で何を読まされているの?となり「活字市場」でくすっと笑い「市場原理」で切なささえ感じ…。今回はゲテモノ食いがなかったのが個人的に幸いでした。おすすめは勿論古栗ファンのみに。2019/02/11
Aster
47
これ去年出た本なのか…面白いですよ。分析的にではなく単純に楽しめたのが良かった。つまり、これを「表現の限界への挑戦」だとか「新しいジャンル」だとかそういう目線で読むことなく読了出来たのが良かった。 この本を読んで、無知蒙昧なジャンル分け、脂下がる為の読書からは手を引きたいと思った。加えて芸術が芸術と、あるいは文学が文学と見なされるのはその瞬間の前後であるべきであってアウラとも言うべきかな、一歩下がって読むことはしたくないと思った。必要なのは読者側の改革、これは譲れないね。2020/02/14
おかむら
34
古栗さんの新作。今回は連作短編集? 看護師菱野時江パートとその他の男性パートが交互に。男性編は全員全裸ってとこに統一感がある、のかしら。内容は「ひと言じゃ言えないかな…」って感じ。あーオカシイ。意味わかんないのにすごいオカシイ。鳥貴族ってなんだよー。オバマも登場。チンポジに牛乳寒天に氷結ストロング風呂。独特だわー。好きだわー。2019/03/26
あじ
33
看護師の時江は写真展で秘境を晒し、出版社勤めの植松は一糸纏わぬ姿で闊歩する。強烈な卑猥さが先行し一蹴される運命を辿りそうな小説だが、これはれっきとした“社会的属性”の打破を仕掛けたテロル。その破壊力といったらハンパない。2019/01/12