内容説明
神“言鯨(イサナ)”によって造られたとされる砂の時代。骨摘みのキャラバンで働く歴史学者志望の少年・旗魚(カジキ)は、裏の運び屋・鯱(シヤチ)と歴史学者・浅蜊(アサリ)に出会う。接近を禁じられた言鯨の遺骸の調査に赴くという憧れの人物に同行することになり胸躍る旗魚だったが、遺骸を見た浅蜊が妙な言葉を口にした瞬間、世界が一変し始めた――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむー
51
砂一面の世界というどっかで見たような設定から始まるものの、物語が進むことで見えてくる真実は独自色があってまずまずの満足感。『よくできました』。世界の真相や物語の展開には充分惹きつけられるものがあってサクサクと読み進められた反面、主人公・旗魚、一匹狼の運び屋・鯱、蟲屋の娘・珊瑚の三人旅でキャラと絆を掘り下げるだけのエピソードがいまひとつなので終盤の気持ち的な盛り上がりがちと足りないところが惜しい。まぁそのへんを掘り下げてたらページが3割増しになっただろうから痛しかゆしかな。2020/06/02
まりも
51
九岡望氏の新作は砂漠に覆われた世界を舞台にした壮大なるSFファンタジー。著者の作品が面白い事は分かっていたが、どうやら九岡望という作家には限界が無いらしい。最初は独特な設定に面食らったが、その設定があるポイントを境に物語を加速度的に盛り上げていく。謎に満ちた世界の真実に徐々に迫っていく時のワクワク感、その先に待つ圧巻のクライマックスとセンチメンタルでロマンティックな結末。352頁の物語の中にこれだけ人の心を熱くさせる要素を詰め込むとは恐れ入った。こういう出会いがあるから読書はやめられないんだよな。傑作。2019/02/03
よっち
40
全土は砂漠化し、人々は神である「言鯨」の遺骸周辺に鯨骨街を造って暮らす世界。街々を渡る骨摘みとして働く旗魚は、旅の途中で裏の運び屋・鯱と憧れの歴史学者・浅蜊に出会い物語が動き出すファンタジー。内密に十五番鯨骨街へ奇病の調査に行った浅蜊が引き起こした言鯨の覚醒と仲間の消失。もたらされた旗魚の劇的な変化と、鯱や蟲使いの珊瑚との逃亡劇、そして言鯨と世界の核心に迫ってゆく展開で、明らかになってゆくこの世界の哀しい真実と登場人物たちそれぞれの熱い想い、そしてそれらに向き合ってゆく旗魚の姿がとても印象的な物語でした。2019/02/06
レリナ
26
これは面白い。最後まで勢いの衰えない傑作。世界の秘密を解き明かしていく中で、主人公達が抗う姿印象的。世界観が素晴らしい。これはお勧めできる作品。こういう作品に出会えるのは読書の醍醐味だな。救いがあるラストは良かった。面白いの一言。文章が読みやすく、自然と話に入っていける。何より難解そうなワードがあっても難しく考えないですむので、良い。キャラも立っていて魅力的。飽きさせない話の展開はすごいと思う。最後まで中だるみのない上質な小説に仕上がっている。ここまで完成度の高い小説に出会えたのは幸せ。また読みたい。2019/02/17
緋莢
18
「言鯨とは、神の名前だ。」その遺骸の周りに十五の鯨骨街を建て、人々は砂漠を砂上船で移動する世界が舞台。骨摘みのキャラバンで働きながら学者を夢見る旗魚(かじき)。ある日、裏の運び屋・鯱と、歴史学者の浅蜊に 出会ったことで、運命が大きく動きます。旗魚や鯱 〝蟲屋”の珊瑚という少女が奔走します。序盤のあるシーンで、ひっかかりを覚えたのですが、終盤である事が明らかになった時に、ああっ!と納得できました。この物語の鍵となる部分が分かった時に、そうか…と切なさを覚えましたが 明るさを感じさせるラストで良かったです。2019/09/12